並々ならぬ柔道に対するリスペクト

 そして3つ目の切り口が、今回強調したい点で、柔道家であるということです。単に親日家というだけでなく、柔道を通して日本文化にも精通しています。

 プーチンは単なる柔道愛好家ではありません。国際柔道連盟から八段をもらっており、実力も相当なものです。また柔道に対する深い造詣とリスペクトも持っています。来日したときにはたびたび柔道の総本山・講道館を訪問していますが、2000年の訪問時には、柔道着姿で型の演武を披露しています。その際に講道館側から、名誉六段贈呈の話があったが、「いや、私は段の重みをよく知っている。自分はまだ六段に値しない」といって辞退しています。柔道に対してそれほど真摯に向き合っているのです。

 またこれは政府関係者にはよく知られた話ですが、プーチンは面談のアポイントを取るのが極めて難しく、仮にアポがとれたとしても、平気で約束の時間に1~2時間も遅刻してきたりすることもしばしばで、やり取りするのが極めて難しい相手なのです。ところが、彼が尊敬する柔道家の山下泰裕さん(現日本オリンピック委員会会長)を通じてアポイントを申し込むと、極めてスムーズに進み、対応も礼儀正しくしてくれると言われています。ここからも、プーチンが柔道をいかにリスペクトしているかが分かります。

2005年の来日時、山下泰裕氏とハグしあうプーチン大統領(写真:Gamma Rapho/アフロ)

 彼と柔道の関わりはかなり古いです。プーチンは少年時代にKBGが登場する映画を見てKBGにあこがれてKGBを志すようになったと言われていますが、彼にはロシア人にしては体格が小柄というコンプレックスがありました。優秀なエージェントになるべくKGBに入るためには、当然、頭脳だけではなく、強靭な肉体も必要ですが、格闘技系は得意でなかったと言われています。