企業の体力を削ぎ続けてきた文在寅政権の経済政策

 これとは別に、韓国経済学会が経済学者を対象に行った調査では、参加した37人の学者のうちの約半数の18人は「政策変化がない場合、5年後の韓国経済成長率は1%台まで下落するだろう」と答えたという。「政府の政策が成長と分配のうちどちらに優先順位を置くべきか」との質問には33人中14人が「成長」を挙げた。

 文在寅政権は、国民の所得を増やし、支出を増やすことで経済を成長させるという所得主導成長を経済政策の基本とし、労働生産性の向上を果たすことなく、最低賃金を5年間で2倍に増加させることを目指してきた。実際、大統領になって最初の2年間で最低賃金を29%引き上げた。しかし、企業がその負担に耐えられなくなり、3年目には2.9%の上昇に抑えざるを得なくなった。この最低賃金引き上げで特に痛手を被ったのは中小企業である。

 そればかりでなく、文政権は民主労総という過激な労働組合団体の意向を汲み取り、労働者寄りの政策を導入した。その典型的な悪法が「重大災害処罰法」である。

 同法は、ガス窒息死などのような産業災害による死亡事故や、2000年代に起こった加湿器殺菌剤事件などのように危険な商品の製造・販売による市民災害で死亡事故が発生した場合、事業主と経営者責任などに対し、懲罰的な損害賠償を命じ、懲戒刑などを課すという厳しいものである。しかも、処罰の基準があいまいであり、外国企業ばかりでなく、韓国企業からも懸念の声が上がっている。

 ちなみにこの2月15日には、次期大統領選挙の候補者・安哲秀(アン・チョルス)氏の陣営で、遊説用のバス車内で2人が一酸化炭素中毒により死亡する事故が発生した。この事件についても、雇用労働部が同法の適応を視野に調査に着手したと報じられている。もしも安全確保義務などへの違反が明らかになれば、安候補と国民の党が処罰を受ける可能性があるという。

 いかに労働者保護・消費者保護のためとはいえ、このように懲役刑を含む厳しい処分を言い渡せる法律が適応基準もあいまいなまま成立した韓国は、企業や経営者にとって、極めて活動しにくい国になってしまっている。また中小企業には同法の厳しい労働者保護を実行する準備が整っていないという調査結果もある。

 もはや企業にとって、韓国で事業を行うことにはリスクが大きく、海外移転が連鎖的に起きる可能性も指摘されている。こうした法律が存在する限り、外資は当然のこと、韓国企業でさえ「国内に投資しよう」という意欲は弱くなるのは当然だ。これも文在寅政権の経済政策が招いた結果なのである。