「双子の赤字」という悪夢
苦境に陥っているのは、個々の民間企業だけではない。
中央日報は17日、「双子の赤字まで起きるか・・・大統領選挙後の韓国経済、防波堤もない」という記事を掲載した。「双子の赤字」とは、経常収支の赤字と財政収支の赤字のことだ。1997年の通貨危機の時もまさに「双子の赤字」状態だった。現在の韓国も、内外で経済リスク要因が同時多発的に発生し、通貨危機以来の「双子の赤字」が現実化しそうで、大統領選挙後の経済は極めて深刻な事態になりそうだという。
経常収支の中身はさまざまな取引の総和だが、市場の大きく影響するのは貿易収支である。韓国経済は貿易に牽引されてきたが、昨年12月と今年1月の2カ月連続で貿易赤字を記録し、2月も10日までの段階で35億ドルの赤字となっているという。原因は原油、ガス、石炭などのエネルギー価格と食品価格の上昇である。
財政赤字も今年までで4年連続の赤字を記録することになりそうだ。政府の総収入から総支出を差し引いた統合財政収支が4年連続で10兆ウォン以上という2ケタの赤字を記録する見通しだが、そうなれば史上初の事態だ。財政赤字の原因は、新型コロナ対応などのために政府の支出が増大したことも要因となっている。
このように「双子の赤字」の可能性は限りなく高くなってきている。
当然、国民生活にも影響が出てきている。
生活必需品の価格が高騰しているばかりか、大統領選後には公共料金が軒並みアップする予定だ。
また韓国では、新型コロナで資金繰りが苦しくなった小規模事業者や中小企業向けに実施した融資の満期延長・償還猶予措置をとってきたが、その期限が3月末にくる。それ以降の延長・猶予はないとされている。そうなれば都市銀行のリスク管理圧力は高まり、多くの債務者が一斉に資金繰りに苦しむことになるだろう。
一方、高騰する住宅価格を含め物価抑制のため、韓国中央銀行は昨年後半から段階的に利上げに踏み切っている。これもまた債務者の負担を増やす要因となる。
国家レベルで見ても、小規模事業者・中小企業レベルで見ても、そして一般市民レベルで見ても、これから待ち受けているのは相当過酷な事態となりそうだ。もちろん対外的な要因、新型コロナ感染拡大という要因は大きい。しかし、文在寅大統領が進めた「成長よりも分配重視」の政策が、韓国経済から対外的なマイナス要因を跳ね飛ばす「抵抗力」を奪ってきたのも事実である。