財政悪化なのに次期大統領候補の公約はバラマキばかり

 今後誰が大統領になろうが直面する韓国経済の状況は予断が許さない。それに備えた合理的で長期的な経済政策を示さなければならないが、各候補はポピュリズム政策を乱発している。

 大統領選の候補者が掲げた「公約」を実践するのに、大統領任期の5年間でどれくらいの費用が必要になるのかを、それぞれの党が試算している。

 李在明(イ・ジェミョン)候補を擁する「共に民主党」は270余りの公約を掲げ、300兆ウォンの費用が掛かると推定したが、公約別の費用は明かさなかった。

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)候補の「国民の力」は200個の公約に266兆ウォンが必要だと計算した。新型コロナ対策50兆ウォン、基礎年金引き上げ35.4兆ウォン、兵士の給与引き上げ25.5兆ウォンなどである。

 安哲秀氏の「国民の党」は100個の公約に年間40.29兆ウォン、5年間で最大201兆ウォンが必要だという。

 しかし、各候補とも財源確保案については歳出予算を節約し、追加歳入を増やすなどというあいまいなものである。文在寅氏でさえ増税公約があったことと比べ、極めてずさんな公約である。現在、韓国の国債3年物の金利が8年ぶりの水準まで高騰しているが、これも財政状況に対する市場の懸念を反映するものであろう。

テレビ討論の際に顔をそろえた韓国大統領選に出馬する候補者たち。左から「正義党」の沈相奵(シム・サンジョン)氏、「共に民主党」の李在明氏、「国民の力」の尹錫悦氏、「国民の党」の安哲秀氏(写真:AP/アフロ)

 韓国の経営者団体「全国経済人連合会」傘下の韓国経済研究院が、2月17日に発表した研究成果によると、2020~2026年の非基軸通貨国(ドル・ユーロ・円・ポンド・人民元を法定通貨として使わない国家)の財政健全性見通しを分析した結果、韓国の国内総生産(GDP)比の国の負債比率増加幅は18.8ポイントで、OECD加盟の非基軸通貨国17カ国で最も高くなったという。

 韓国の国の負債比率は2020年の47.9%から2026年には66.7%に急増すると予想されている。要するに財政状況が急速に悪化する見通しなのだ。

 韓国経済研究院は、韓国の負債増加速度が非常に早く、急速な高齢化と高い公企業負債などリスク要因が山積みしていると評価している。

 大統領候補がそれぞれ主張しているような、バラマキ政策を実施できるような財政事情ではないのだ。