(舛添 要一:国際政治学者)
北朝鮮は、10月15日、朝鮮半島の南北を結ぶ道路と鉄道の一部を60メートルの区間にわたって爆破した。北朝鮮と韓国が融和して統一への道を歩むという発想を、自ら断ち切るかのような暴挙である。
また、ウクライナに侵攻するロシア軍に、3000人もの北朝鮮兵士が参加しているという。ロシアと北朝鮮の軍事協力が拡大している。
金正恩は何を考えているのだろうか。
憲法改正して韓国を完全に敵国視
北朝鮮は、韓国につながる京義線と東海線の道路と鉄道を爆破したが、閉鎖された国境を「永久的に要塞化」する措置を引き続きとるという。
今年の1月15日、金正恩は、最高人民会議で演説し、「韓国を第一の敵国」とみなすように憲法を改正する必要があると述べ、韓国との対決姿勢を強調した。そして、「同族意識がなくなった大韓民国とは統一の道を共に歩むことはできない」として、憲法から「自主、平和統一、民族大団結」といった表現を削除し、韓国を「第一の敵国、不変の主敵」とみなす教育事業の強化を明記すべきだと指示した。
また、韓国との対話と交流の窓口である祖国平和統一委員会、民族経済協力局、金剛山国際観光局の三機関の廃止を決定した。
さらに、2000年に開催された南北首脳会談の後に完成したアーチ型で高さ30メートルの「祖国統一三大憲章記念塔」を破壊した。今年の1月15日の演説では、金正恩は、この記念塔は「目障り」だと述べており、1月23日に撮られた平壌の衛星画像には映っていない。
文在寅政権から尹錫悦政権に代わって、韓国では、親米、親日、反北朝鮮色が濃くなり、それに金正恩が反発し、統一を放棄し、「韓国を主敵」と位置づけたのである。