もし、頼る人が誰もいない状況で余命宣告をされたら、どうしたらいいのだろうか。もし、そう親しくもなかった人の終末期ケアを急に託されたら、どうしたらいいのだろうか。
ある日、筆者は友人から「親戚のお姉さんが、がんになってからあっという間に亡くなった、医者からひどいことを言われていた」というメールを受け取った。
「お姉さんはずっと独身で、要介護のお母さんと2人暮らしだった。もうできる治療がないと言われた後、なんとかお母さんとの暮らしに戻ろうとしていた時に医者が急に病室に来て、カーテンをシャッと開けて『秋まで生きていられるとは思わないでくださいね!』って言ったんだよ。ひどいと思わない?」
友人は、こういうケースはよくあることなのかと、がんサバイバーの筆者に確かめたかったそうだ。よくよく事情を聞いてみると、ある日突然、友人の母を含めた3人の従姉に「余命3カ月と言われました。助けて下さい」という手紙が届き、何も知らなかったその3人で終末期の面倒を見ることになったのだという。そのことが近しい間柄ではなかった親族たちに、重い後悔や喪失を背負わせることになってしまったようだ。
要介護の母と二人暮らしの独身女性、末期がんになる
亡くなったミエコさん(仮名)は当時54歳の独身。20年前に父を亡くし、高齢で要介護の母と2人暮らしだった。がんであることは誰にも告げず、母にはきつく口止めして、誰にもにまったく頼らずにがん治療を続けていた。ミエコさんのように介護が必要な高齢の親しか家族がいなかったり、離れて暮らしている独身者の「おひとりさまがん患者」は、少子高齢化社会において増えつつある。同時にそういう人のケアを家族ではない人が急に頼まれるケースも出始めているのだ。
介護やケアを託す相手がいない状況で死が差し迫ってきた時、また急に命尽きようとする人を託された時、私たちはどうすればいいのか。ミエコさんのケースから考えてみたい。