さて、ここまでふるいにかけても、「やっぱり睡眠に問題を抱えている」ということであれば、いわゆる「不眠症」として、何らかの対処が必要になるでしょう。

現代人の睡眠を狂わせる「過覚醒」

 現代人に不眠症をもたらす原因は、主に2つあります。「体内時計(第4回参照)」と「過覚醒(第5回参照)」です。

 日本人の平均的な体内時計は24時間10~20分です。それ以上長い人は、眠る時間がどんどん後にずれていってしまいます。その対処方法と限界については前回前々回で解説しました。

 簡単にまとめると、体内時計を毎日きちんとリセットするために、平日、休日に関わらず起きる時間を固定すること。そして、起きたらまず日の光を浴びて、三食きちんと食事をすることが大切です。毎日同じリズムを刻んでいくことが、体内時計を24時間にアジャストしていくためには必要なのです。そして寝だめはせず、どうしても眠気が強い時は午後の早めの時間に15分から20分ぐらいの昼寝をしましょう。

「体内時計」と負けず劣らず影響力が強いのが「過覚醒」の問題です。

 強い光は体内時計をリセットさせる方向に働くので、夕方以降に強い光を浴びたり、テレビやパソコンのモニターを見続けたりすれば、覚醒度は高まったままになります。また、遅くまで頭を活発に動かしていれば、いざ寝ようと思っても簡単にはクールダウンできません。

 このコロナ禍で、ただでさえ過覚醒気味の現代人は、その傾向をますます強めています。なぜかというと、リモートワークやテレビ会議が日常の一部となりつつあるからです。従来であれば、おおむね出社時間内に片付いていたものごとも、空間的、時間的な制約が緩んだことにより、むしろ片付くのに時間が掛かるようになったと感じている人も多いのではないでしょうか。

 出社して、同僚の目がある中での作業と、自宅での作業、どちらの方がより集中できているかといえば、一般的には前者なのでしょう。自宅であれば、休憩もいくらでも挟むことができるからです。

 作業が寸断されることによって、一段落するのが遅れれば、その分頭の中も遅くまで仕事モードになっています。入眠という観点からすれば、マイナスに作用することになるでしょう。

 自宅で作業ができるというのは、良い面、悪い面がある諸刃の剣です。リモートワークで過覚醒を避けて、質の高い睡眠を得るためには、集中や熟考を要するような仕事は1日の前半にまとめて、後半はルーティンワークなどで徐々にリラックスしていくなどの工夫が必要でしょう。