仕事とプライベートは常にセットであるべき
私たち現代人は、効率的に仕事をして生じたスキマ時間に、さらにタスクをねじ込んでゆきます。そして、さらに生産性を上げることに血眼になっていく。あたかも、見えない競争相手に勝つためのチキンレースかのようです。
効率的に大量の仕事をこなしていくことに、ある種の楽しさがあるのは間違いありません。全能感、自己肯定感もはぐくまれます。しかしその一方で、やりたいこと、楽しみたいことはどんどん先送りされていきます。たまにぽっかり時間が空けば、何をすればいいのかもわからないし、この時間でできる仕事を思い起こして、罪悪感すら持ってしまう人もいるのではないでしょうか。
張り裂けんばかりにタスクを詰め込み、ミチミチに膨れ上がった昼を作り出した結果、そのしわ寄せはすべて夜に押し付けられています。過覚醒は不眠の大きな原因の1つですが、多くの現代人は、まさにギンギンに過覚醒なのです。これではうまく寝られるわけがありません。
しかし、このコロナ禍は、多くの人に一時停止を強要し、自分将来や家族についてじっくり再検討することを迫りました。この機会を十全に利用し、拙速に元の生活に戻ろうとしない方が良いのではないかと私は感じています。
生産性を上げること自体は良いのですが、その結果生じたスキマ時間は、本来やりたかったことをやったり、自分の理想の将来像に向けて準備をしたりする方が望ましいのではないでしょうか。
いつかしようと思っていたことを先送りしていたら、その機会を失ってしまうことがあるというのは、今回のコロナ禍で身に染みて分かったことだと思います。
「行きたかったお店が閉店してしまった」
「会いたかった人に自由に会えない」
「やりたい仕事があったのにストップした」
誰しも1つや2つは思い当たることがあるのではないでしょうか。海外旅行も、しばらくはおあずけになるでしょう。仕事とプライベートは、人生のどのステージにおいても、原則的にはセットにしておくべきです。今の生活で人生が楽しめなかったら、未来の生活でも楽しめない可能性が非常に高い。
私たちは、生産性を上げるということの意味をもう一度自分にきちんと問い直す必要があります。
自分にとって最優先の仕事はそもそもやっていると思います。そうなると、生産性を上げて新しく生じたスキマ時間では、次にやりたいことをやることになります。その次は、生産性を上げて、まあやってもいいかなということをやる。この行きつく先では、そこまで必要じゃないこともやっているかもしれません。よく考えてみると、これは「人生の生産性」を上げていません。
1日24時間を、1年365日を、そして残りの人生を、どのような気分で、どう生きたいのかということを、私たちは自分自身に問い直す必要があるのではないでしょうか。
【参考文献】
(1)『睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン』
※著者の近藤慎太郎氏が新刊『ほんとは怖い健康診断のC・D判定』を出版しました。「ちょっと忙しかったし」「まあ、まだ元気だし」──。こんな言い訳を自分にしつつ、健康診断のC判定やD判定をほったらかしていませんか。でも、ほんとに怖いんですよ、そのままにしていると。「糖尿病」「高血圧」「脂質異常症」「痛風」「尿路結石」……。さらに、こうした病気になった人が、「脳卒中」や「認知症」、「心筋梗塞」を起こし、“要介護状態"になることも少なくありません。本書はこうした病気が起こるメカニズムと症状、そして発症を予防する食生活や運動について、エビデンス(科学的な根拠)を用いながら、現代の医学で分かっていることをマンガも交えて丁寧に解説しています。