高市首相は一刻も早く更迭すべき(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)
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(山本一郎:財団法人情報法制研究所 上席研究員・事務局次長)

 首相官邸の安全保障担当幹部による核保有発言が、思った以上の騒動に発展しています。この年の瀬に何を面倒くさい事態を引き起こしてるんだよと言いたくなるところですが、やっちまったものはしょうがないので対処しようとしています。

 中国には主に英語圏で本件が「利用」され、日本批判のナラティブの具になってしまったのは残念なことです。他方で論点が拡散し、近視眼的になってしまい、どうしても「オフレコ破りの是非」「核保有論そのものの是非」「発言者の資質」が入り乱れて議論されてしまいがちです。本稿ではこの問題に補助線を引き、整理を試みます。

 先に結論を書くとコレです。

・議員が国会で核武装の是非を議論したり、国民が自由に政策について論じたりするのは構わない。
・しかし、政府中枢にいる人は「個人的に」であっても、また「オフレコ」であっても核武装を是認する言動をするのは極めて問題。
・そもそも日本は世界で唯一の被爆国という立場を外交資源に替え、核不拡散や核兵器廃絶でリーダーシップを取る一方、同盟国アメリカの核の傘で守ってもらっているという曲芸的な安全保障体制を敷いている。
・米中が実質的な手打ちを進める中、東アジアの安全保障で頭越しにハシゴを外されかねない言動を取るなど、日本が隙を与えることはあってはならない。
・支持率の高い高市早苗政権の油断、緩みの象徴とも言えるが、やらかした政府高官氏は総理・高市さんと昵懇であり、下手すると処分すらされない恐れもある。

 結論から言えば、今回の問題はオフレコの中身の是非ではなく、政権中枢にいる人物の危機管理能力と国際感覚の欠如にあります。単純に「政府中枢で役職を持っている人が『個人的に』でも『オフレコ』でも語ってはならない」ことです。

 そして、本来であれば更迭が妥当な事案であるにもかかわらず、高市早苗総理との関係性ゆえに火種を残したまま留任する可能性が否定できず、政権運営に不安を残す展開となっています。

 日本の安全保障環境において、特に情報戦の現場においては大変なエサを中国にくれてやった形になっており、英語圏で一大キャンペーンを張られています。ところが、高市政権では本件がさして問題視されていないことから対策が打たれておらず、大変なことになりかねません。