高市官邸で続々と「復権」する問題人物

 高市政権は現在、高い支持率を維持しています。この状況下で側近を切れば政権基盤が揺らぎかねないという計算が働いているのではないでしょうか。そして、目下この人物はほぼ特定されて、国内でも海外でも情報が流通し、アメリカ政府ですらやんわりと遠回しに注意する見解を出しているにもかかわらず、何の処分もされない可能性があるのです。

 しかし、ここで留任させれば火種は残ります。今後も安全保障をめぐる発言のたびに「あの核保有発言の人物がまだ官邸にいる」という批判が蒸し返されることになりますし、中国・北朝鮮にとっては格好の攻撃材料として繰り返し利用されるでしょう。

 短期的な政権維持を優先した結果、中長期的な外交コストを払い続けることにならないか。大丈夫なのか、と問わざるを得ません。

 そして、高市政権の問題点として言うならば、このような安全保障に関する問題だけでなく、補正予算・財政問題や円安物価高に関する問題、社会保障にまつわる各種政策についてや、さらに進んで止まらないとみられる少子化対策のような国内問題においてをや、日によって異なる見解が政府筋から流れてきています。

 すべてに目を通して政策判断をする高市早苗さんにとっては、日々刻々状況が更新される中で健気に、真面目に対応されているのだろうとは思いますが、日によって言ってることが違う中枢というのは現場からすれば、気まぐれな猫のしっぽのごとくぶんぶん振り回されることにもなりかねませんので、落ち着いて対処してほしいと願う次第です。

 蛇足になりますが、高市早苗さんは長らく後ろ盾として機能してきた安倍晋三政権での成功体験が残ってしまっているのか、安倍政権の中でも特に問題だと見られ、安倍さん自らが距離を置いたはずの人物が続々と高市官邸で「復権」してしまっているのは気になります。

 中には、政府役職に一時的にいたことを使ってネットで妄言を垂れ流して情報料収入やセミナー開催を繰り返している輩のような人まで入り込んでいて、非常に面倒なことになりそうな気がしています。

山本 一郎(やまもと・いちろう)
個人投資家、作家
1973年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。東京大学政策ビジョン研究センター客員研究員を経て、情報法制研究所・事務局次長、上席研究員として、社会調査や統計分析にも従事。IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作に携わる一方、高齢社会研究や時事問題の状況調査も。日経ビジネス、文春オンライン、みんなの介護、こどものミライなど多くの媒体に執筆し、『ネットビジネスの終わり(Voice select)』『情報革命バブルの崩壊 (文春新書)』『ズレずに生き抜く 仕事も結婚も人生も、パフォーマンスを上げる自己改革』など著書多数。
Twitter:@Ichiro_leadoff
ネットビジネスの終わり』(Voice select)
情報革命バブルの崩壊』 (文春新書)
ズレずに生き抜く 仕事も結婚も人生も、パフォーマンスを上げる自己改革』(文藝春秋)