(藤 和彦:経済産業研究所 上席研究員)
米WTI原油先物価格は、OPECプラス(OPEC加盟国とロシアなどの大産油国)による新たな協調減産の合意にもかかわらず、1バレル=20ドル台前半で低迷している。
OPECプラスは、原油価格の急落を受けて4月9日に緊急のテレビ会議を開き、5月から2カ月間にわたり日量1000万バレルの減産を行うことで合意した。サウジアラビアとロシアがそれぞれ日量250万バレル減産するとしているが、その他諸国の減産幅は明らかになっていない。OPECプラスはさらに、7月から2020年末まで日量800万バレル、2021年以降は同600万バレルの規模で協調減産を続ける意向である。
日量1000万バレルという減産規模は史上最大だが、世界の原油需要は日量3000万バレル以上減少すると見込まれていることから、市場関係者は「焼け石に水」と判断している。
米国も減産に協調姿勢
だが、今回のOPECプラスの取り組みは、規模に加えて世界第1位となった米国が協調姿勢を見せていることに特色がある。
州の石油産業を監督するテキサス鉄道委員会(TRC)のシットン委員長は4月3日、「米国が減産することが国際的な合意の支援になるなら、テキサス州はこれを支持する」と述べた。テキサス州で生産活動を行っている大手シェール企業も減産を提案している。シットン氏はさらにノバク露エネルギー相と協議したとされている。
4月に入りノースダコタ州で大手シェール企業が経営破綻しており、テキサス州当局は同州でも倒産の嵐が起き、経済が苦境に陥るのをなんとしても食い止めたいところだろう。