レバノン・ベイルートのラフィク・ハリリ空港で、サウジアラビアで足止めされていたレバノン人乗客を運ぶバスの見張りをするレバノン軍兵士たち。新型コロナウイルスの拡散を防ぐために3週間近く前からベイルートの国際空港は使用が制限されている(2020年4月5日、写真:AP/アフロ)

(藤 和彦:経済産業研究所 上席研究員)

 米WTI原油先物価格は、OPECプラス(OPEC加盟国とロシアなどの大産油国)による新たな協調減産の合意にもかかわらず、1バレル=20ドル台前半で低迷している。

 OPECプラスは、原油価格の急落を受けて4月9日に緊急のテレビ会議を開き、5月から2カ月間にわたり日量1000万バレルの減産を行うことで合意した。サウジアラビアとロシアがそれぞれ日量250万バレル減産するとしているが、その他諸国の減産幅は明らかになっていない。OPECプラスはさらに、7月から2020年末まで日量800万バレル、2021年以降は同600万バレルの規模で協調減産を続ける意向である。

 日量1000万バレルという減産規模は史上最大だが、世界の原油需要は日量3000万バレル以上減少すると見込まれていることから、市場関係者は「焼け石に水」と判断している。

米国も減産に協調姿勢

 だが、今回のOPECプラスの取り組みは、規模に加えて世界第1位となった米国が協調姿勢を見せていることに特色がある。

 州の石油産業を監督するテキサス鉄道委員会(TRC)のシットン委員長は4月3日、「米国が減産することが国際的な合意の支援になるなら、テキサス州はこれを支持する」と述べた。テキサス州で生産活動を行っている大手シェール企業も減産を提案している。シットン氏はさらにノバク露エネルギー相と協議したとされている。

 4月に入りノースダコタ州で大手シェール企業が経営破綻しており、テキサス州当局は同州でも倒産の嵐が起き、経済が苦境に陥るのをなんとしても食い止めたいところだろう。