新型コロナウイルス感染拡大の影響がいよいよ製造業にも及び始めた。メーカーが本格的な生産調整に入った場合、来年度以降の設備投資が凍結されるなど、影響が長期化する可能性が高まってくる。政府は大規模な経済対策を検討中だが、経済活動の自粛と景気刺激策は基本的に矛盾してしまうので、100%の効果を発揮できる保証はない。各メーカーの生産調整がどれだけの規模となるのか、見極める必要があるだろう。(加谷 珪一:経済評論家)

自動車メーカー各社がいよいよ生産調整へ

 トヨタ自動車やマツダなど、自動車メーカー各社は、コロナウイルス感染拡大による需要低迷を受けて、一時的な操業停止を決定した。トヨタは高岡工場や田原工場など国内5工場の一部ラインを3~9日程度停止するほか、マツダは本社工場と防府工場の操業を13日間停止することに加え、8日間は昼間のみの生産にとどめる。

 米国ではすでに各メーカーが生産の一時停止に入っているほか、欧州でも操業停止を実施するケースが増えている。北米への依存度が高いメーカーの影響は甚大で、スバルは全生産ラインの停止を決定した。

 自動車メーカー本体が操業を停止すれば、当然、部品を供給する部品メーカーにも影響が及ぶ。トヨタグループのアイシン精機はすでに3割程度の工場で稼働をストップしているので、自動車業界はグローバルレベルで生産調整に入ったと見てよい。

 欧州や米国では、強制力を伴う外出禁止措置が取られており、自動車の販売ができない状態にある。流通段階で過剰な在庫を抱えることはできないので、生産の一時停止はやむを得ないだろう。

 感染症の拡大といった事態が発生すると、一般的に、(1)観光業、(2)航空業(運輸業)、(3)イベント業、(4)外食産業、(5)小売業、(6)製造業の順番で影響を受けることになる。諸外国では外出禁止措置によって、外食産業や小売は大打撃となっており、国内についても政府や自治体からの自粛要請で、やはり外食や小売が大きな影響を受けている。