ドローンがカバーできる範囲は半径1km~最大4km、高度は最高で150m。4Kや12Kカメラを搭載すれば数mmの解像度で詳細に見られるのが強みだ。一方、「イザナギ」らSAR衛星の強みは昼夜天候問わず、10km単位の広い範囲で観測できること。しかも36機体制になれば10分間隔で1mの解像度でモニタリングできる。(イザナギに搭載している)合成開口レーダーは、どのくらいの土砂が崩れたかが数値で分かる。「定量的に分かりやすい衛星と、映像で直感的に分かりやすいドローンを組み合わせられたら」と期待が膨らむ。

「なかなか気づかれないところですが、たくさんの設備をきちんと保守点検するという、当たり前のことを当たり前にすることは大変なことです。5年前にはドローンという言葉は一般的にはそれほど知られておらず、九電がドローンサービスを始めることは誰にも想像できなかったと思います。それが今、1つの事業になっている。SAR衛星も今はあまりなじみがないかもしれませんが、5年後にどう発展するか、すごく楽しみです」

 原さんが言う通り、私たちの日常生活は電気が「当たり前に使える」という前提のもとに成り立っている。将来、電気の安全・安定供給の実現に衛星データが貢献できるのではないだろうか。

 まずは、「イザナギ」が取得する初画像お披露目が楽しみなところ。QPS研究所によれば「初号機ということもあり、いくつものハードルがありましたが、SAR衛星を運用する上で重要なポイントはすべてクリアでき、衛星機能の95%までは達成しています。現在、最後の不安定な箇所の調整・調査をしている」とのこと。

 SAR衛星は地上にレーダーを発信し、そのレーダーを受けることで昼夜問わず観測できるが、その分難易度も高い。衛星を正確に使用するには、姿勢制御に想定以上に時間をかけなければいけなかったことなどで、予定より初画像のお披露目に時間がかかっているようだ。だが、世界初の挑戦に想定外はつきもの。荒波を乗り越えるたび、チームの技術レベルはアップしているはずだ。

 2月26日にはQPS研究所がJAXAと協力し、36機のSAR衛星による準リアルタイムデータ提供サービスの実現化に向けて、画像化圧縮技術などの検討を行っていくことも発表された。準備は着々と進められている。

 今年中には、「イザナギ」の改良点をフィードバックした2号機「イザナミ」も打ち上げ予定。古事記によれば「イザナギ」と「イザナミ」の2神が国を作ったとされる。九州産衛星群がどんな世界を作り上げるのか。挑戦の過程も含めて見守っていきたい。

2号機「イザナミ」振動試験モデル。オガワ機工にて。