そこで、インフラの状況をより早く、より効率的に把握するために、九州電力は2016年から「ドローン」を導入。直後の4月14日、熊本地震が起こった。「現場で何が起きているのか分からない。連絡手段も乏しい中、ドローンにより被害状況を映像で把握することで、速やかな復旧計画の策定に役立ち、数日で仮復旧することができた。災害復旧に『ドローンは使える』ことが分かりました」
また、九州は離島が多く、従来は船で離島に渡って設備を点検する必要があったが、1~2km離れた離島であれば、対岸からドローンを操作することによって、配電設備の点検ができるようになった。電柱や電線が劣化していないか、周囲の木が電線に接触していないか確認することができ、効率化できたという。
このようなドローンを使ったインフラ保守点検の手法を、同様の課題を感じている企業でも広く活用してもらおうと、九州電力が2019年に始めたのが「九電ドローンサービス」だ。
ウェブサイトを見ると、12Kカメラで細部を確認したり、サーマルカメラで設備の温度異常を把握したりするなど、特殊な装置を搭載したドローンを使用している。興味深いのは、保守点検だけでなく、プロモーション映像作成や測量など、多様なサービスを提供している点だ。
ドローンを活用している電力会社は他にもあるが、社外の顧客向けにサービスを提供するのは全国で九州電力が初めて。同社は約100人のドローン操縦者を抱え、本店や支社など九州の9カ所に配置する。これまで法人を中心に数十社がサービスを利用し、好評だという。
ドローンの課題、衛星との役割分担
これまで、人が行っていた保守・点検作業にドローンを使うことで、低コスト・効率化を実現した。しかし、課題はある。例えば「ドローンの場合、現場近くまで操縦者が出かける必要がある。またバッテリーの制限により30分程度しか飛行することができない。弊社はドローンを飛行する際の申請手続も行いますが、現状の法規制ではドローンの飛行が困難な場所もあります」
地震などの災害が起こった場合、「どの地域が停電しているかは事業所で監視しているので把握できますが、例えば電柱が倒れているためか、電線が切れているためかなど、その原因については現場を確認しなければ把握できません。衛星なら、広い範囲で電柱が倒れているかいないかが迅速に分かるのではないか。また、復旧のために現場に人が入れる状況なのか、どの経路ならアクセスできるかも分かるかもしれません。SAR衛星で全体像を把握して、詳しく見たい場所にドローンを飛ばすことが災害復旧において有効な手段になりえると感じています」(原さん)