それは2つの意味を含む。1つはこの連載で紹介してきたように、衛星「イザナギ」が福岡県の中小モノづくり企業16社が協力して開発した技術の結晶である点。つまり「ハード分野」。そして、もう1つが「ソフト分野」。「イザナギ」衛星を駆動させるシステムが、福岡県発のプログラミング言語「mruby」(軽量Ruby)によって開発されている点だ。

 mrubyは国産のプログラミング言語「Ruby」を組込みソフト分野に適用させることを目的に、経済産業省の支援を受けて開発されたプログラミング言語。生産性が高く、迅速な開発に適していることから、福岡県は全国に先駆けて振興を図る。

「QPS研究所さんはRubyをご活用いただく有望な企業であるとともに、福岡県を代表するスタートアップと理解しています」。小野さんが語るように、福岡県の「イザナギ」への期待は大きく、パブリックビューイングには小川洋福岡県知事もかけつけ祝辞を述べている。

QPS研究所は2018(平成30)年度の「フクオカRuby大賞」を受賞。

 打ち上げに成功した今、福岡県が期待するのは何か。

「打ち上げは1つのきっかけに過ぎません。QPS研究所は、最終的には合計36機の衛星を打ち上げる計画です。機器開発やバージョンアップもあるでしょうから、モノづくり企業にとってチャンスが出てくると思います。さらに我々が期待するのは、衛星データの活用。Rubyを使う企業の中には優秀なソフトウエア技術を持つ企業も多く、衛星データの活用を狙う企業も出てくるでしょう。ビジネスチャンスが広がってくるのではないか。何らかのコラボレーションを考えたい」(小野さん)

 日本全体で宇宙開発に力を入れる自治体は、近年、急激に増えている。福井県は福井県民衛星「すいせん」を打ち上げようとしているし、茨城県は「いばらき宇宙ビジネス創造拠点プロジェクト」を進める。九州でも2つの発射場をもつ鹿児島県、航空機から人工衛星を発射する「アジア初の水平型宇宙港」を目指す大分県など、各自治体が宇宙を産業活性化の柱に据え、取り組み中だ。では、福岡県の強みは何か。