地球を観測する衛星、と言えばお馴染みなのは光学衛星。「Google Earth」のように、私たち人間の目で見える可視光で観測するため、何がどこにあるか一目瞭然で分かりやすい。
ただ光学衛星には難点がある。夜は観測できないこと、そして雲に覆われると地表が見えないことだ。1日のうち半分は夜だし、昼でも雲に覆われる確率は50%を超えるといわれている。この課題を解決するのがレーダーを使ったSAR(合成開口レーダー)衛星だ。
SAR衛星はマイクロ波を使い、雲を通過して地表面を観測できる。また衛星から地表に照射し返ってきたマイクロ波を受信するので、夜間でも観測可能。つまり昼夜、天候問わず観測できるのだ。
今、世界は「小型SAR衛星黎明期」にある。アメリカ・シリコンバレーのカペラスペース(Capella Space)、フィンランドのアイサイ(ICEYE)が、2018年、相次いで技術実証機を打ち上げた。
そこに打って出るのが、新井元行CEO率いる日本のスタートアップ「シンスペクティブ(Synspective)」(東京都中央区)だ。2020年に技術実証機を打ち上げ、2020年代には計25機の衛星コンステレーションを構築し、「データに基づく持続可能な未来」実現を目指す。2019年7月には創業17カ月で累積109億円の資金調達を発表したことで話題になった。これは世界最速・国内最大規模である。新井氏に聞いた。
今、なぜSAR衛星黎明期なのか
昼夜問わず観測できて、悪天候にも左右されにくい。こんなにメリットがあるSAR衛星がなぜ、今まであまりビジネスに活用されなかったのか。その背景に新井氏は2つの点を挙げる。
「1点目は規制緩和です。SAR衛星は、技術的には1980年頃に確立されていましたが、主に防衛用途に使われてきました。転機が訪れたのは2016年。アメリカが商用展開していいと規制緩和したことで、マーケットが一気に広がると期待が高まりました」
そして2点目が小型・軽量化の技術開発だ。