未来の月での生活、どのようなディナーを楽しめるのだろうか。

 有人月探査が加速している。2019年3月末、米トランプ政権は5年以内にアメリカ人飛行士を月面着陸させると発表した。三菱総合研究所によれば、2045年ごろに月面ホテルなど基地以外の建造物が増え、月面経済活動がスタートして民間宇宙旅行が一般化すれば、月面に1000人が滞在する「月経済圏」ができるという。その時代、月への訪問者は1万人になるという試算もある。

 人が暮らすときに欠かせないのは? 「食」だ。その市場規模は、原料や調理器具などのサプライチェーンを含めると、2045年までに最大5600億円、関連技術の波及も含めると最大2兆3000億円にもなるという(三菱総研試算)。

 想像してほしい。憧れの月に大枚をはたいて旅行で訪れる未来を。旅の楽しみのひとつは食事だ。フリーズドライやレトルト食品で簡単に済ませるのは寂しい。月の地平線から上る「地球の出」を眺めつつ、月面産の食材で作ったディナーを堪能したいではないか。日本の技術や食文化を生かせば、2040年頃こんな月面ディナーが食べられるかもしれない。

2040年の月面での地産地消を想定した月面ディナー。左下がメインの「培養肉のメリメロステーキ」、右下が藻類のグリーンスープ、中央が細胞培養マグロと月の海。

 月の植物工場で作ったみずみずしい葉野菜のサラダ、3Dフードプリンターで作った細胞培養マグロのお寿司、月で培養された藻類のグリーンスープ、そしてメインは牛、鳥、エビ、ユーグレナから作られた培養肉に大豆とみそ、豆乳ベースのソースをかけた培養肉のメリメロステーキだ。

 この「月面ディナー1.0」は3月27日、 JAXAや30以上の企業、大学などが始動した「Space Food X(スペースフードX)」プログラムで発表されたもの。特徴は月面での地産地消を想定していること。例えば、藻類や人工培養肉などの素材は月で培養し、葉物は植物工場で育てる。3Dフードプリンターなど、製法にも日本の最先端技術を生かす。