2019年12月11日、福岡県庁1階ロビーに予想をはるかに超える約500人もの県民が詰めかけた。2階まで人だかりの山。目的はインドから発射される小さな、だが日本初の小型SAR衛星「イザナギ」打ち上げの生中継パブリックビューイングだ。「福岡のベンチャーがすごいことをやってるらしい」と興味津々で集まった博多っ子たちは、18時55分の打ち上げ後、衛星が無事放出されると「やったー!!」と拍手。クラッカーをならし地元、九州発衛星の成功を祝った。
【第1回】「九州に宇宙産業を、師匠と弟子の衛星開発ベンチャー」
(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/58411)
【第2回】「2号機も続け! 衛星づくりは地場企業と二人三脚で」
(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/58911)
【第3回】「宇宙で花開け、衛星成功に挑む九州・中小企業の底力」
(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/59080)
実は打ち上げ時間が決まったのはわずか1週間前。パブリックビューイングを開催しようにも、打ち上げ時間が夜中になる可能性や、夜中に集まってもらっても、土壇場で延期になるリスクも多々あった。QPS研究所も開催は難しいと考えていたところ、福岡県が「県庁で開催しませんか?」と持ちかけた。打ち上げ延期は宇宙業界では「あるある」(=常識)だが、ロケット打ち上げ初体験の県職員にとっては冷や汗ものだったはずだ。
なぜ福岡県庁は、これらリスクがありながら、QPS研究所の「イザナギ」打ち上げパブリックビューイングを敢行すると決めたのか。「我々もワンチームの一員と思い、打ち上げを楽しみにしていたからです」と福岡県商工部新産業推進課IoT推進班の小野昌志さん、金武清之介さんは口をそろえる。