5年後、衛星を使うのは当たり前になっているかも

九州電力テクニカルソリューション統括本部 情報通信本部の原昂生さん。画面はドローンで撮影した宮崎県の一ツ瀬ダム。ドローンを使うことで人がアクセスできないところからも撮影可能。

 衛星データを使う側になりうる人たちは、「イザナギ」をどう見ているのか。「QPS研究所が描く『リアルタイム観測マップ』が本当に実現したら、状況把握でこれまで人が担っていた役割が衛星データに置き換わる時代が来るかもしれない」と語るのが、九州電力の原昂生さんだ。

 原さんは九州電力の情報通信本部ICT事業推進グループに所属。ICTを活用した新規事業の創出など新しい取り組みを検討している。その1つが「九電ドローンサービス」だ。

 九州電力がドローンを使い始めた目的は、自社が保有する膨大なインフラの保守点検作業の効率化だった。九州電力は沖縄を除く九州の約800万世帯に電力を供給するため、水力発電所143カ所、火力発電所8カ所、内燃力発電所33カ所、原子力発電所2カ所、さらに送電線約1万803km、配電線約14万2000kmなど多くのインフラを抱える。これらすべてのインフラの状況を把握し、定期的にメンテナンスしなければならない。すべてを人手で賄うのは時間もコストもかかり非効率だった。

 しかも近年は自然災害が頻発・甚大化する傾向にある。2019年9月、台風15号で首都圏に大規模停電が起こったことは記憶に新しい。千葉県を中心に数十万戸が停電。倒木や土砂崩れの影響で推計2000本の電柱が損傷したと見られ、復旧は難航を極めた。東京電力は約8000名体制で対応。九州電力を含む他の電力会社からも車両や復旧要員を応援派遣した。

「当社も他人事ではありません。もともと九州は自然災害が多い地域。台風は毎年襲来し、地震、大雨も起こります。災害にも耐えるよう強度設計をしていますが、それでも鉄塔や電柱の倒壊、電線が切れたりして停電が発生する可能性はあります」

 現代社会は電気に依存しており、停電になれば日常生活を支える多くの機能がマヒしてしまうため、停電が発生したら一刻も早く復旧しなければならない。そのためには設備の被害状況をいかに早く把握できるかが鍵となる。