(提供:W. M. Keck Observatory/Sean Goebel)
(小谷 太郎:大学教員・サイエンスライター)
天文学業界ではここ最近、天の川銀河中心の活動が活発になっていると話題です。ハワイ島はマウナケア山頂にあるケック望遠鏡が赤外線で観測したところ、史上最高の明るさが記録されました。X線観測衛星やガンマ線観測衛星も、銀河中心からのフレア(爆発的放射)を報告しています。
天の川銀河の中心核は太陽系から2万5600光年離れていますが、そこに一体何がいるのでしょうか。そこで今(から2万5600年前)、何が起きているのでしょうか。
天の川銀河の超巨大ブラックホール
天の川銀河の中心核に一体何がいるのか、答えからいうと、超巨大ブラックホールです。その名を「いて座A*(エースター)」、あるいは「Sgr A*(サジテリウス・エースター)」といいます。略して「サジ・エー」と発音すると通っぽく響きます。(個人の感想です。)
(ついでに書いておくと、私たちの太陽系が属する星の大集団は「天の川」「天の川銀河」「銀河系」などといいます。この「銀河系」は固有名詞ですが、「系」をつけずに「銀河」というと星の大集団を表す一般名詞になり、こちらは宇宙にうじゃうじゃ浮かんでいます。何とも紛らわしい命名法です。)
天の川銀河の中心に鎮座(ちんざ)まします超巨大ブラックホールSgr A*、その質量は私たちの太陽の約400万倍、おそらくこの銀河系で最も重い天体です。天の川銀河の主(ぬし)といっていいでしょう。
Sgr A*についてはこの連載でも以前取り上げましたが、要点を軽くおさらいしましょう。
ブラックホールは、重力が強すぎて、光さえも脱出できない天体です。その近くでは、空間が伸び、時間がゆっくりになるなど、常識に反する奇妙な現象がさまざま生じます。
そんな常識に反する奇妙な物体が実在するのでしょうか。研究者は侃々諤々(かんかんがくがく)論争を重ねました。