(小谷太郎:大学教員・サイエンスライター)
2019年のイグノーベル賞が9月13日(日本時間)に発表されました。世の中にはこんな「研究」をしている人がいるのかと開いた口がふさがらない受賞業績が今年も並びました。
発表された10本の賞のうち、日本人の受賞した化学賞など、いくつかはすでに報道されてご覧になったかもしれませんが、ここでは今回の受賞業績を全部紹介しちゃいましょう。
イグノーベル賞とは
「人々を笑わせ、それから考えさせる業績」に対して授与されるイグノーベル賞は、1991年、雑誌編集者で会社経営者(当時)のマーク・エイブラハムズ氏(1956-)によって創設されました。
「イグノーベル(Ig Nobel)」は「下品な」とか「不名誉な」を意味する「ignoble」と、「ノーベル(Nobel)賞」をかけた駄洒落で、つまり「下品なノーベル賞」あるいは「不名誉なノーベル賞」を意味します。
本家のノーベル賞受賞者が賞を手渡す授与式のお祭り騒ぎと、飛び出す数々の奇妙な研究は、年々有名になり、真面目なメディアも取り上げるようになりました。イグノーベル賞の名はすっかり秋の季語として定着し、今では、本家ノーベル賞よりも楽しみにしている人もいるくらいです(筆者調べ)。
ただしイタリアに限る
イグノーベル医学賞
受賞者:シルヴァーノ・ガルス。(イタリア)
受賞理由:ピザ(イタリア製に限る)が病気と死を防ぐ証拠を集めたこと。
ガルス氏は、がん患者や心筋梗塞患者などのピザの消費量を調べ、ある種の病気では消費量が少ないという統計結果を得ました。ただしこの傾向はイタリアに限られ、アメリカなどでは見られません。ガルス氏の仮説では、イタリアの食文化は循環器系に良く、ピザの消費量はその指標になっているのではないかとのことです。
“Does Pizza Protect Against Cancer?”, Silvano Gallus, Cristina Bosetti, Eva Negri, Renato Talamini, Maurizio Montella, Ettore Conti, Silvia Franceschi, and Carlo La Vecchia, International Journal of Cancer, vol. 107, no. 2, November 1, 2003, pp. 283-284.
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/ijc.11382
“Pizza and Risk of Acute Myocardial Infarction”, Silvano Gallus, A. Tavani, and C. La Vecchia, European Journal of Clinical Nutrition, vol. 58, no. 11, November 2004, pp. 1543-1546.
https://www.nature.com/articles/1601997
“Pizza Consumption and the Risk of Breast, Ovarian and Prostate Cancer”, Silvano Gallus, Renato Talamini, Cristina Bosetti, Eva Negri, Maurizio Montella, Silvia Franceschi, Attilio Giacosa, and Carlo La Vecchia, European Journal of Cancer Prevention, vol. 15, no. 1, February 2006, pp. 74-76.
https://journals.lww.com/eurjcancerprev/Abstract/2006/02000/Pizza_consumption_and_the_risk_of_breast,_ovarian.12.aspx