量子力学の世界においては、光も音も粒子であり波でもある(画像はイメージ)。 Illustration by NASA/Sonoma State University/Aurore Simonnet.

(小谷太郎:大学教員・サイエンスライター)

 2019年7月2日、京都大、ミシガン大、米ロスアラモス国立研究所、東京大、茨城大のグループが、ある種の固体の内部を動き回る未知の中性粒子を発見したと発表しました*1

 未知の中性粒子とはいったい何のことでしょうか。新しい元素でも見つけたのでしょうか(違います)。

*1:プレスリリース(http://www.k.u-tokyo.ac.jp/info/entry/22_entry751/

金属の中では電子がうようよ泳いでる

 今回発見された奇妙な物質は、どこが奇妙なのでしょうか。それを理解するために、奇妙でない普通の物質についておさらいしておきましょう。

 例えば、金属は奇妙でない普通の物質の仲間です。みなさん御存じの通り、ぴかぴか光を反射する、電流を通す、触るとひんやり冷たいといった、奇妙でない性質を持ちます。

 光を反射する、電流を通す、ひんやり冷たい、というこれら三つの性質は、全て関連していて、金属の本質的な特徴です。これらは「自由電子」の作っている性質なのです。

 金属の中では無数の電子がうようよ泳ぎ回っています。金属の結晶構造は金属原子が規則正しく整列して作っていますが、電子は原子から原子へ、原子の隙間をすりぬけ、自由に動き回ります。この自由に動き回る電子を自由電子と呼びます。このような自由電子を持つ物質が金属です。

 普通、自由電子は個々にランダムに泳ぎ回っていますが、金属に電場をかけると、電場から力を受けた電子は一斉に移動します。電子が一斉に移動すると、これは電流となります。自由電子があるために金属は電流を通すのです。