ケック望遠鏡の銀河中心観測

 マウナケア山頂のケック望遠鏡は、補償光学によってグレードアップし、最高0.01秒角の角度分解能を達成しています。これならばSgr A*もそこに密集する恒星も、くっきり分解して鮮明に観測できます。

 このケック望遠鏡を用いて、カルフォルニア大ロサンゼルス校(UCLA)の銀河中心研究グループは、Sgr A*近傍の超高角度分解能観測を行なっています。その20年以上の観測データを1枚の図にしたものが次です。

天の川銀河中心の超巨大ブラックホールSgr A*を周回する恒星の群れ。ケック望遠鏡による1995年~2018年のデータ。
(提供:UCLA Galactic Center Group - W.M. Keck Observatory Laser Team. This image was created by Prof. Andrea Ghez and her research team at UCLA and are from data sets obtained with the W. M. Keck Telescopes.)

 見方を説明をすると、青い宇宙にオレンジ色や黄緑色の丸が浮いていますが、これらの丸は一つひとつが太陽のような巨大な恒星やガス雲です。2万5600光年もの遠方にある恒星がこうして分解されて見えるのは驚きですが、この観測データのさらに凄いところは、20年の間にそれらの恒星が徐々に位置を変えて動くところが捉えられているということです。赤や青やシアンの楕円はそれらの恒星の描く軌道です。

 地球や火星や木星などの惑星は、何年もかけて位置を変え楕円を描き、太陽を周回しています。それと同様に、天の川銀河中心部の恒星は、何年もかけて位置を変え楕円を描き、何らかの重力源を周回しているのです。

 このデータから計算すると、その重力源の質量は太陽の約400万倍になります。

 これは、天の川銀河の中心に存在する、太陽質量の約400万倍の超巨大ブラックホールの決定的な証拠写真なのです。

どこの銀河もモンスターを飼っている

 ところで、広い宇宙には無数の銀河がうじゃうじゃ浮いています。それらの無数の銀河はどれもこれも、中心部に超巨大ブラックホールを1匹飼っていると考えられています。

 ただし、他の銀河は2万5600光年どころではない遠方にあるので、Sgr A*のように直接観測は(可視光望遠鏡や赤外望遠鏡では今のところ)できません。