(舛添 要一:国際政治学者)
6月18日、トランプ大統領は、フロリダで正式に大統領選立候補を表明した。2万人を集めた会場で、80分間にわたり演説し、「Keep America Great(アメリカをこれからも偉大に)!」という新しいスローガンを発表した。集会の模様を見ると、圧倒的に白人保守層が多く、熱狂的な支持者を前に、トランプは民主党の大統領候補たちをこき下ろした。
来年の8月24〜27日に共和党の党大会で大統領候補者が決まり、11月3日の大統領選で次期大統領が決まる。1年以上の長い選挙戦のスタートである。今のところ、共和党内には強力な対抗馬が見当たらず、トランプが候補者になる確率は高いと見られている。
当選の瞬間から再選に向けて動いてきたトランプ
トランプ政権は、米中貿易摩擦、イランとの対立など、外交上も様々な問題を抱えているが、今のところ、経済が好調なのが強みである。失業率は3%台で歴史的な低さであり、法人税減税などの景気刺激策で経済成長が続いている。
トランプは、大統領に当選した瞬間から、再選に向けて動いきた。すべての政策がそのために組み立てられたと言っても過言ではない。海外の産品に保護関税を課しているのも、安価な外国産品の流入で職を失った多くの白人労働者の支持を求めてのことである。メキシコとの国境に壁を作っているのも、不法移民の流入でアメリカ人の職が奪われているとの認識があるからである。
最近では、トランプは、FRBに金利の引き下げを要求し、圧力をかけている。量的緩和をしないFRBの金融政策を「馬鹿げた(ridiculous)」政策と批判し、パウエル議長の解任も視野に入れていることを仄めかした。時の政権が中央銀行に介入することは先進民主主義国では戒められているが、トランプはそんなことは意にも介さない。トランプの頭の中にあるのは、大統領再選のみなのだ。
そのトランプの圧力が効いたのか、FRBは、19日、FOMC(連邦公開市場委員会)後に発表した声明で、「景気拡大を維持するために適切な行動をとる」と述べ、利下げに踏み切る可能性を示唆している。