6月1日、シャナハン米国防長官代理が、シンガポールで行われた安全保障会議、通称「シャングリラ会合」において、「自由で開かれたインド太平洋」に関するスピーチを行った。
それと同時に、米国防省から「インド太平洋戦略報告(IPSR:Indo-Pacific Strategy Report)」が発表された。
この報告(以下IPSRと記す)は、約1年半前に発表された「国家安全保障戦略(NSS:National Security Strategy)」および「国家防衛戦略(NDS:National Defense Strategy)」の下での、インド太平洋地域における米国の安全保障政策の方針について、包括的に記述したものである。
米国のドナルド・トランプ大統領が、「米国第一」を標榜する中において、国防省が発表したIPSRは、それとは趣を異にし、この地域における同盟国・友好国との連携の強化を基軸に今後の米国のインド太平洋地域への関与を具体的に描き出しており、日本の安全保障にとって非常に重要な文書であると言えよう。
IPSRは4章構成となっており、第1章で基本となるビジョン、第2章で戦略環境、第3章で国益と防衛戦略、第4章で具体的施策が記述されているが、その内容を通じて、特に注目すべきであるのは次の3点である。
第1に、「自由で開かれたインド太平洋(Free and Open Indo-Pacific)」というビジョンの下で、自由貿易の促進、地域の連結性強化、公正な国際規範の重視を明確に掲げて、具体的な諸施策においてこれを一貫させていること。
第2に、中国、ロシア、北朝鮮を、上記ビジョンへの挑戦者であると断定し、これら各国に厳しい態度で臨むことを強調していること。
第3に、インド太平洋地域に、同盟国と友好国からなる濃密な安全保障のネットワークを築き上げていくと宣言していることである。
以下、この3点についてもう少し詳細に見てみたい。