トランプ氏、米中貿易戦争とファーウェイ問題を初めて関連付け

中国政府は、アメリカの「ファーウェイ潰し」にもちろん猛反発(2019年4月17日撮影、資料写真)。(c)Greg Baker / AFP〔AFPBB News

(舛添 要一:国際政治学者)

 米中貿易摩擦が激化している。13日、アメリカは、予定通り中国からの輸入品3000億ドル(約33兆円)ドル分、3805品目に、最大で25%の関税を上乗せする手続きに入った。この対象品目の4割が消費者向けであり、アメリカの消費も確実に減退する。しかし、このところアメリカ経済は好調であり、それがトランプ大統領の強硬姿勢の背景にある。

「ファーウェイ潰し」

 しかし、世界経済には大きなマイナスで、日本経済にも深刻な打撃を与えている。22日に財務省が発表した4月の貿易統計によると、貿易収支は604億円の黒字で、前年同月比で90.3%の減少であった。全体の2割を占める中国向け輸出が大幅に減ったことが影響している。とくに半導体製造装置や部品の落ち込みが大きい。

 2019年1~3月期の国内総生産速報値は、実質で前期比0.5%増、年率換算で2.1%増と内閣府が発表したが、これは事前の大方の予測とは逆の結果であった。2四半期連続のプラス成長ということであるが、中身をよく見ると、輸出の減少よりも原油などの輸入の減少が大きかったことが理由であることが分かる。GDPの6割を占める個人消費は0.1%減だし、中国経済減速の影響で設備投資も0.3%減だ。

 米中貿易戦争の影響が、10月に予定されている消費税増税の延期を巡る議論にも影響を与えているわけだが、さらにトランプ政権は、15日にアメリカ政府の許可なくファーウェイ(華為)に電子部品などを販売することを禁止する措置をとった。ファーウェイ本社のみならず、日本法人を含む68の関連会社が対象である。すぐさま各方面に影響が広がった。

 このアメリカ政府の指示に従い、19日、グーグルはアンドロイド最新版のファーウェイへの供給を停止。ファーウェイは、スマホのOSにグーグルのアンドロイドを使用しているため、Gメール、YouTubeなどへのアクセスができなくなる。これは世界中のファーウェイ製スマホユーザーにとっては大きな衝撃となる。日本では22日、KDDI(au)とソフトバンクが、5月下旬に販売を予定していたファーウェイのスマホの新機種(P30ライト)の販売を延期する措置をとった。また、NTTドコモは、予約受付を停止した。

 今では、スマホは多くの人にとって日常生活の必需品であり、今後キャッシュレス化が進むと、決済にも重要な役割を果たすだけに、米中摩擦の事態の深刻さを国民に印象づけたと言えよう。イギリスや韓国でも同様な動きが広まっている。