本コラム「食の研究所」では、私たち日本人にゆかりのある食べものをさまざまテーマにしてきた。中でも、「豆」を原料にした食べものがなんと多いことか。「醤油」「納豆」「あんこ」「豆腐」「枝豆」「もやし」「味噌」といった具合だ。私たちは食卓で豆腐に醤油をかけたり、味噌汁にもやしを入れたりしているが、これらは考えてみれば「豆と豆」の組み合わせ。そのことにあまり気をとめないほど、豆の使われ方には多様性がある。
豆の偉大さを、あらためて噛みしめることのできる本がある。この2018年11月に文庫版として出版された吉田よし子著『マメな豆の話』(KADOKAWA刊)だ。2000年に平凡社から刊行された新書が、18年の時を経て復刊された。世界と日本の豆を知り尽くせる決定版といえよう。
日本人に世界の、外国人に日本の豆製品を伝える
著者の吉田よし子さんは、1932年生まれ。1966年から1984年までフィリピンに住み、熱帯の食用植物の調査をした。そうした成果は『香辛料の民族学』『カレーなる物語』といった著書にもなっている。
『マメな豆の話』は、私たちが「豆」といって思い浮かべるダイズについて、豆腐や納豆などの他にも世界で多様なものがあること、また、ダイズ以外にも世界で広く食べられている豆があることを述べたものだ。
本書の大きな特徴は、著者が実際に現地を訪ね、食材や料理を買ったり作ったり食べたりしていることにある。中国を訪ねては、布のように折りたためる「厚百葉」や、白カビなどを使った「臭豆腐」などのダイズ料理に出合い、インドの豆食文化については、ヒヨコマメなどを煮てポタージュ状にした「ダール」や、油で揚げた豆せんべい「パパダム」などを紹介していく。