こうした反中感情の広がりを増幅しているのは、確かな根拠や証拠がないにもかかわらず、SMS上で加速的に共有されているネガティブな情報の累積である。

 これに対して、客観的な事実と明確な論理で反論しても相手にされない。

 こうした状況において、短期的に有効な対策はまずない。日本も1990年代半ば以降、反中感情が強まり、2012年の尖閣問題発生後に一段と悪化した。

 最近は日中関係の改善もあって、多少雰囲気は良くなってはいるが、依然として国民の9割が反中感情を抱く異常な状況はあまり変わっていない。

 米国でも今後そうした状況が続くものと考えられる。そうなれば日本は難しい選択を迫られることになるはずだ。

3.欲望をコントロールする「理性」

 東洋思想において「理性」とは欲望をコントロールする自己規律の心を意味する。

 西洋的概念では、理性は「感情におぼれず、筋道を立てて物事を考え判断する能力」(大辞苑)とされ、欲望をコントロールする自己規律という内省的な意味はそれほど強くない。

 東洋の伝統精神文化において学問の目的は人格の向上である。啓蒙主義と科学に土台を置いている西洋の学問とは発想が根本的に異なる。

 トランプ大統領が「アメリカ・ファースト」という利己主義的政策を堂々と国家政策の基本方針として掲げるのは欲望のコントロールが欠如していることを示している。

 米国は戦後長期にわたって世界各国の平和、自由、繁栄のために大きな貢献を果たしてきた。