米国は「自分で自分を撃っている」 関税発動控え中国がけん制

中国・上海の港のコンテナ前に掲げられた国旗(2018年4月9日撮影)。(c)AFP PHOTO / JOHANNES EISELE〔AFPBB News

1.中国は米中貿易戦争を回避できるか

 7月6日、米ドナルド・トランプ政権は中国からの輸入品340億ドル相当の品目を対象に関税を引き上げるとを発表した。

 6月15日に発表していた500億ドル相当分の関税引き上げ実施の第1弾である。これに対して、中国政府は即時に同額の報復措置を採り、米国からの輸入品340億ドル相当に対する関税引き上げを発表した。

 これを受けて、7月10日、トランプ政権はさらに中国からの2000億ドル相当の輸入品の関税を引き上げることを発表し、米中両国による報復合戦に入るリスクが高まっている。

 米国のWTO(国際貿易機関)ルール違反と見られる理不尽な貿易制裁措置に対して、中国政府は同様の手段による強硬姿勢を採らずに沈静化するのを待つべきだった。

 もちろん中国の国内政治を考えれば、現在の状況下で米国政府に対して融和的な対応を取ることはリスクが大きい。対米弱腰外交と批判されるからである。

 それでも米中両国が貿易戦争に突入するのを防ぐには、中国はまともに報復すべきではなかった。中国が貿易戦争を回避するメリットは以下の3点である。

2.中国が貿易戦争を回避するメリット

(1)米国国内からの批判

 第1に、中国から米国への輸出の6割は外資企業による輸出であり、その中心は米国企業である。

 このため、米国政府が中国からの輸入品の関税を引き上げれば、中国政府は何もしなくても米国企業、米国経済に大きなダメージを与える。

 すでに米国内では産業界などがトランプ政権の関税引き上げ措置を厳しく批判しており、今後産業界が受けるダメージが庶民の生活にも及び始めれば、ますますその批判は強まるはずだ。

 こうした状況が続けば、トランプ政権自身が米国内の圧力で対中制裁を見直さざるを得なくなる可能性が高い。

 逆に中国が毎回報復すれば、一部の米国民の間では中国に対抗するナショナリズムの感情が沸き上がることが予想される。これはトランプ大統領の思う壺である。