1.グローバル企業が注目するシリコンバレーと中国市場
シリコンバレーは世界の新規事業開発の中心である。米国企業全体の新規事業開発への投資の地域別ウェイトは、シリコンバレーが60%、ニューヨークが10%、ボストンが10%、その他が20%と言われている。
シリコンバレーに行かなければ世界のビジネスの潮流が今後どういう方向に向かおうとしているのかを把握するのは難しい。
一方、中国経済は2010年代以降、世界の経済成長の主力エンジンである。その国内市場の伸びは他の海外市場を圧倒する。
しかも、中国経済自体が急速に構造変化を遂げつつあるため、市場ニーズの変化も急速である。地域による違いも大きく、中国各地の主要な市場に足を運んで自分の目で見なければ市場ニーズを実感することはできない。
現在、グローバル市場で活躍する企業にとって、シリコンバレーと中国市場は最重要拠点である。同時に、グローバル市場の中で最も急速に変化しているのがこの2つの場所である。その両方において多くの日本企業の動きは鈍い。
シリコンバレーと中国市場は全く異なる市場であるため、日本企業の動きの鈍さの原因も異なるとつい最近まで筆者は考えていた。
ところが、シリコンバレーにおける日本企業の動向に詳しい専門家や有識者の話を聞くと、両方において成果や業績が上がっていない日本企業の間には驚くほど多くの共通課題があることに気づかされた。
2.シリコンバレーで成果が出せない日本企業の主な課題
3月にサンフランシスコに出張した際、シリコンバレーの日本企業の事情に詳しい現地駐在の日本人有識者と面談した。その人物は次のように語った。
ここ数年、日本でもイノベーションの重要性が盛んに指摘され、オープンイノベーションブームとも言える状況が続いている。そうした状況を背景に、多くの日本企業がシリコンバレーに注目するようになった。
5年前に比べると、日本からシリコンバレーを訪れる出張者、あるいは現地の日本企業の事務所は5~10倍に増加した。日本企業が社員を派遣する目的は情報収集であり、研究開発部門または経営企画部門の人材が派遣されるのが一般的である。
こうした変化を見ると一見新規事業開発に注力しているように見えているが、実はその成果は乏しい。