1.自動車産業を中心に日本企業の中国ビジネスが積極化へ
日本企業の対中投資がいよいよ本格的に動き出した。
中国ビジネスの業績好転を背景に、昨年後半から日本の対中直接投資金額が前年比プラスに転じ始めた(図表1参照)。
図表1 主要国の対中直接投資の推移
その背景は、昨年から中国経済が堅調な推移に転じたことに伴う日本企業の業績好転に加え、日中関係が改善しつつあることが影響している。
特に本年5月前半に李克強総理が中国の総理として8年ぶりに日本を公式訪問し、日中関係は正常軌道に戻ったことを明言して以降、その傾向が一段と加速している。
日本企業の中国ビジネスも活気づき始めており、とりわけ自動車産業の積極化が目立つ。
2019年春にホンダの武漢第3工場の稼働開始を前に、稼働後の生産数量増加に合わせて、多くの関連メーカーが能力増強投資を実施中である。
中国国内販売の好調が続いている日産自動車は将来の増産体制強化に備えて、新たな工場立地を検討中であるとのうわさが流れている。
そしてトヨタ自動車は、李克強総理が訪日時に同社の北海道工場を見学した際に豊田章男社長自ら案内し、李克強総理と長時間話し合う機会があった。
その後、同社の中国ビジネスの取り組み姿勢が急に積極化し、長期的なシェア大幅拡大とそのための増産体制の構築に向けて準備を開始したと言われている。
このように日本の自動車大手3社が揃って中国ビジネスへの取り組み姿勢を積極化させつつあることは、部品メーカー等を含めた自動車関係業界全体の中国ビジネスに大きな影響を及ぼすのは確実である。
さらには、日本企業の中国ビジネスの約半分が自動車関連であることから、その影響は自動車関連にとどまらず、日本企業の対中投資姿勢全体を積極化させる可能性も十分考えられる。