そのあり得ない選択肢の実現を目指そうとしているトランプ政権の対中強硬策に対し、米国内でも多くの有識者、特に中国をよく理解している国際政治・外交専門家の多くは強く反対している。
トランプ政権の「アメリカ・ファースト」政策は、米国が戦後長期にわたって貫いてきた2つの大方針に真っ向から反する内容だからである。
米国は20世紀前半に勃発した2つの世界大戦を二度と繰り返さないようにするため、経済ブロック化の阻止と世界経済の協調発展を基本方針として堅持してきた。
日本はそのおかげで戦後の奇跡的な経済復興と高度経済成長を実現した。
しかし、トランプ政権は日本に対して同盟国として対中強硬政策への共同歩調をとるよう強く求めてくると考えられる。
日本からの輸入品に対する関税引き上げなどの経済制裁を圧力として使いながら対中強硬政策への協調を強要すると予想される。
戦後ずっと米国の経済政策と共同歩調をとってきた日本の立場から見て、自由貿易や経済成長までも否定するトランプ政権の基本方針は容認できるものではない。
これはトランプ政権と距離を置く米国の多くの有識者の見方と一致する。
しかし、米国はいま、共和党、民主党の党派を超えて、多くの国民が中国を脅威とみなし、反中感情を高めている。
その様子は尖閣問題発生直後に日本国内で反中感情が高まった状況に似ている。中国を冷静に分析する専門家は親中派のレッテルを貼られ、多くの人々から批判を受けている。