そのうえで、防衛白書は、軍事能力の比較は、兵力、装備の性能や量だけではなく、想定される軍事作戦の目的や様相、運用態勢、要員の練度、後方支援体制など様々な要素から判断されるべきものであるが、中台の軍事バランスは全体として中国側に有利な方向に変化し、その差は年々拡大する傾向が見られる、としている。

 そして、台湾国防部は2018年8月、「2020年までに中国が全面的な侵攻作戦能力の完備を目指している」とし、両岸関係が重大な局面に移りつつあるとの見解を示している。

迫る台湾危機は日本の危機
日本はどうすればよいのか

 米国は、ドナルド・トランプ政権になって、「台湾関係法」を根拠に、バラク・オバマ政権が凍結していた14.2億ドル(約1562億円)の台湾への武器売却を承認した。

 台湾が目指す潜水艦の自主建造(国産化)についても、米政府は2018年4月、米企業に対し台湾側との商談を許可するなど、台湾への軍事協力を強化している。

 また米国は、中国の反対によって台湾との交流を自粛してきた結果、両国の交流不足を来したとして、「台湾旅行法」(2018年3月6発効)を制定し、米台政府関係者の交流をあらゆるレベルで促すこととした。

 米議会も、2018年8月に「国防授権法」を成立させ、台湾の要求に基づく防衛装備品や役務の提供、台湾軍の軍事演習への参加招請、台湾政府高官・軍高級幹部との交流プログラムの実施、西太平洋における台湾海軍との二国間海上訓練、米国海軍と台湾海軍の相互寄港の実行可能性の検討などを求めている。

 このように米国は、台湾の安全保障・防衛強化のための措置を講じつつあるが、米国は台湾カードを利用し、この地域、特に南シナ海での中国の軍事的支配を牽制・抑制し始めたとの見方もある。

 では、台湾を「運命共同体」と位置づけ、死活的利益を共有する日本は、どうすればよいのか。

 安倍晋三政権になって、日台関係は少しずつ強化されつつあると言ってよかろう。

 日本と台湾は、昭和47(1972)年の断交後、双方が窓口機関を設置して実務的な交流を行ってきた。

 日本の対台湾窓口機関の名称は「交流協会」であったが、平成29(2017)年1月に「日本台湾交流協会」に変更された。台湾側もこれに呼応した形で、対日窓口機関の名称を「亜東関係協会」から「台湾日本関係協会」に変更した。

 両機関の旧名称はともに「一つの中国」原則を主張する中国への配慮から名づけられものであり、日台関係の困難を示す象徴であった。