日本ではリベラル派が退潮しているが、その背景にはエリートや知性主義への庶民の反感がある。高市の出身である神戸大学は、名門校であるが、東大に比べて、全国的にはエリート校としての知名度は低い。そこで、高市は庶民性をアピールするのに成功している。日本では、反エリート、反知性主義の風潮が強い。

 アメリカの反知性主義はキリスト教に根ざすもので、リベラルと呼ばれる知識人への反発が、聖書を盾にする戦いとなる。ところが、日本では“神なき反リベラル”であり、まさに知性を欠いたポピュリズムである。信仰に基づくものではないので、風向きが変われば、一気に逆方向に動く。高市人気も、何らかのスキャンダルや政策の失敗で、いつ退潮するかわからない。日本の反知性主義は危うすぎるのである。

2005年の郵政解散との比較

 2005年9月に行われた衆院選挙(郵政解散選挙)では、小泉純一郎首相の戦略が上手くいって、自公で3分の2以上の議席を得た。今回ほどではないにしろ、大勝であった。

郵政解散後の衆院選が公示され、街頭演説で有権者に訴える小泉純一郎首相=2005年8月(写真:共同通信社)

 2006年9月には小泉首相が退任し、安倍晋三内閣が誕生した。しかし、年金記録問題が国民の関心事となり、内閣支持率は下がり、2007年夏の参議院選で自民党は惨敗し、ねじれ国会となった。安倍はそのまま首相の座にとどまり、私は厚労大臣に任命されたが、安倍は、持病の悪化で9月に辞任した。

2007年9月、辞任を決意し、緊急記者会見に臨む安倍晋三首相(写真:共同通信社)

 2005年の衆院選大勝利から、わずか2年でこのような惨めな状況になってしまった。

 高市首相が同じような試練に直面する可能性も皆無ではない。政治の世界は「一寸先は闇」である。生身の人間であるから、健康問題も気に掛かる。

 年金記録問題のような、国民の生活に直結する問題やスキャンダルなどが浮上すれば、高市人気で保ってきた政権への支持が急速に失われる可能性もある。