イラン情勢の緊迫、いつまで?

 先週末に「米国とイランが交渉に向かう」との見方が浮上したため、2日の原油価格は一時、1バレル=61ドル台前半と先週末から約6%急落した。

 だが、その直後に事態は緊迫化した。

 3日、米海軍はアラビア海で空母エイブラハム・リンカーンに向かってきたイランの無人機を撃墜し、イラン革命防衛隊の小型船がホルムズ海峡を通過する米国籍のタンカーを拿捕しようとする事案も発生したからだ。

 両国の協議開催が危ぶまれたが、イランのアラグチ外相は4日「米国と6日にオマーンで協議を行う」と自身のX(旧ツイッター)に投稿したことを受け、地政学リスクへの警戒は再び後退した。

 米シティグループが「原油価格には7~10ドルほどのリスクプレミアムが上乗せされている」と分析しているように、地政学リスクが原油相場の現状(大幅な供給過剰)を覆い隠している。だが、このような状況はいつまでも続くとは思えない。

 筆者は「OPECプラスが4月から増産を再開すれば、原油価格は再び50ドル台に低下する」とみている。

 気がかりなのは、OPECの盟主サウジアラビアが自国で開催予定の国際イベントを次々と延期していることだ。アジア・オリンピック評議会(OCA)は1月下旬に2029年に予定していた冬季アジア大会の延期を発表していたが、2月5日には開催地自体をカザフスタンに変更して予定通り開催すると発表した。原油価格の低迷によりサウジアラビアの財政収入が減少していることが要因だ。

 ブルームバーグは1月27日「サウジアラビアの政府系ファンドは昨年12月、10を超える国内の有力一族に投資の協力を呼びかけた」と報じた。

 実質的な支配者であるムハンマド皇太子が推進する「ビジョン2030(2兆ドル規模の投資計画)」が行き詰まっていることの証左だろう。

 原油市場に大きな影響力を持つサウジアラビアの動向についても、引き続き高い関心を持って注視すべきだ。

藤 和彦(ふじ・かずひこ)経済産業研究所コンサルティング・フェロー
1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。