燃費だけでは終わらせない──スバルが次にやるべきこと

 ロードテストで見えたこれらの特性に鑑みて、スバル初のリテール向けストロングハイブリッドS:HEVは、マイノリティブランドであるスバルの顧客層を広げるのには間違いなくプラスに作用しそうに思えた。

 もともとスバルは乗り心地の良さや走行安定性など、アナログ的なクルマの作り込みに関しては非凡なものを持ち合わせたメーカーだ。従業員数における開発部門の比率、開発部門における実験部隊の比率が日本の自動車メーカーの中で最も高いのは、スバル自身がそういうテイスト作りを大切にしていることの表れと言える。

 今回ロードテストを行ったクロストレックも乗り心地と操縦性のバランスが絶妙で、世界のコンパクトカークラスにおいて、強力なライバルモデルに対しても一歩も譲らないくらいの仕上がりだった。

 そんなスバルがマイナーブランドという地位に甘んじていた原因のひとつが燃費性能の低さだったのだが、S:HEVくらいの性能があれば、そのネガティブ要素はかなり緩和される。ここでスバルがS:HEVの性能ではなく、S:HEVをトリガーとしてクルマ作りの哲学そのものをユーザーに訴求することができれば、新しい顧客を獲得できるだろう。

 一方で、このくらいの燃費性能、動力性能であれば、スバルの独自技術である電気モーター1個のパラレル方式でストロングハイブリッドを作り、2モーターのトヨタ方式は燃費規制がさらに強められた時のために取っておくというのも手だったのではないかと思うのも事実だ。

 先に述べたようにS:HEVは実走行において、マイルドハイブリッドに対して3割前後の燃費改善効果を示した。だが、それはスバルのマイルドハイブリッドが技術的にダメだったからというわけではない。

 電気モーターのパワーはわずか10kW(13.6馬力)だが、電気モーターの前後にそれぞれクラッチを設け、運転状況によってはエンジンと電気モーターを切り離してEV走行を効率よく行うことも可能という、一般的なベルトドライブのマイルドハイブリッドとはレベルが異なる高度なシステムだった。

 にもかかわらず燃費が伸びなかったのは、ハイブリッドシステムの能力があまりに小さかったことと、ハイブリッドに合うエンジンを持っていなかったためだ。

 仮にハイブリッドシステムの電気モーターの能力が30kW(40.8馬力)、バッテリーもある程度増載し、今回新造した2.5リットルミラーサイクルエンジンを組み合わせれば、20km/リットル程度の燃費であれば十分出せたであろう。それなら技術的にも完全にスバルのオリジナルと主張できた。

 だが、それは今さら言っても仕方がないこと。トヨタの技術を下敷きにしたS:HEVでストロングハイブリッドに踏み出した以上、スバルは初動でそこそこの評価を得たことに満足せず、さらなる性能向上と低価格化を間断なく進める必要がある。

 今の性能で稼げる時間的な余裕は大きくはない。スバルのハイブリッド戦略が大きな果実を得られるかどうかは、むしろ今後にかかっていると言えよう。

クロストレックS:HEV(成田空港の東峰神社にて筆者撮影)