(4)複雑な国際情勢

 イスラエルは、イラン国民による抗議活動を支持すると表明している。この表明は、イラン国民のナショナリズムを刺激して逆効果になる恐れもある。いわんや、昨年6月に行われたようなイスラエルと米国によるイラン空爆が再び行われれば、イラン体制内の変化をむしろ遅らせる可能性も否定はできない。また、ロシアや中国が現体制を支援している点も1979年とは異なる。

イランの歴史は再演されるか

 こうした状況を踏まえると、今後の展開として、以下の3つのシナリオが想定されよう。

【シナリオA】 体制変革の成功。IRGCの一部が寝返り(あるいは中立を保ち)、反体制派が統一指導部を結成、組織的資金支援が確立される。

【シナリオB】 膠着状態と「ゆっくりとした崩壊」。断続的なデモと選択的な弾圧が続き、体制は倒れないものの統治能力と正統性が持続的に低下し、社会が疲弊していく可能性がある。

【シナリオC】 鉄拳による鎮圧。IRGCが2019年型の大規模虐殺に踏み切るというシナリオである。短期的には鎮静化するが、国民の絶望が解消されない限り、散発的な抵抗はマグマのように蓄積し続ける。

 IRGCの体制内における中枢的な位置付けや、抗議活動を行っている市民の組織的限界を踏まえると、すぐにシナリオAが起きる可能性は必ずしも高くないだろう。むしろ、シナリオBとシナリオCのいずれかに陥る可能性が高い。

 もっとも、その場合に、昨年6月に行われたようなイスラエルや米国による権力の中枢に狙いを定めたピンポイントを絞った空爆が行われれば、唐突な権力の空白が生じる可能性もあるだろう。

 実際、1月4日夜に5時間にわたって行われたイスラエルの閣議では、イラン革命防衛隊の弾道ミサイル施設や防衛システムを標的とする、「アイアン・ストライク作戦」(Operation Iron Strike)について議論されたと伝えられており、現在、イスラエル軍は高度な警戒体制にある。

 また、米軍についても、2025年6月の米軍によるイラン核施設攻撃の直前にも見られたように、現在、米国本土から飛翔したC-17長距離輸送機の大規模展開が英国のフェアフォード空軍基地で確認されているとの報道もある。

 こうした動きは、イランが内からの抗議活動のみならず、改めて外からの軍事的圧力に直面していることを示唆している。

 イランには「空腹の腹には宗教も信仰もない」という諺(ことわざ)がある。物質的困窮は、最終的にいかなるイデオロギー的忠誠をも侵食する。1979年と同様、経済的絶望という燃料は今や全土に満ちている。今回の抗議活動が1979年型の革命をもたらすか否かを占うにはいまだ時期尚早だが、現体制の中長期的衰退と正統性の喪失はもはや不可避だろう。

 体制変化の種は既にまかれた。それがいつ、どのような形で花開くのか、その答えは、内と外の圧力が一致する時点に訪れることになろう。それほど遠くないタイミングで。