米国の規制は中国国内のAI産業と「デジタル自立」を進めるバネ
一方、米有力シンクタンク「戦略国際問題研究所(CSIS)」のチャールズ・ウェスナー氏らは11月6日付で「バイデン政権が輸出規制を課して以来、エヌビディアが意図的に性能を下げた半導体チップの100万個以上がグレーマーケットを通じて中国に流入した」と指摘している。
ファーウェイはフロント企業を通じて世界の先端半導体の90%以上を製造する台湾積体電路製造(TSMC)から200万個以上のチップを不正に調達したとされる。先端半導体を調達するための闇市場ネットワークの規模と巧妙さが浮き彫りになった。
「規制を強化しようとする米国の努力が高まるにつれ、世界は米国と結びついたサプライチェーンから分散しようとするインセンティブも高まる。米国製チップに規制メカニズムが組み込まれるほど国際的な競合他社が信頼できる代替案を提供する余地が広がる」(ウェスナー氏ら)
中国は米国の規制を、国内のAI産業と「デジタル自立」を進めるバネにしてきた。中国独自の代替案とデジタル主権への意欲を強化した結果が光チップ開発に結びついた。光チップは世界の第三勢力に米国のサプライチェーンからの離脱を再考させる引き金にもなりかねない。
【木村正人(きむら まさと)】
在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争 「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。