知らない間に都心の「陸の孤島」に
「モビステ川崎・橘公園」の周辺には、東急東横線の元住吉駅やJR南武線の武蔵新城駅、武蔵中原駅、また東急とJRが乗り入れる武蔵小杉駅といった鉄道の駅があるものの、どの駅からも2km以上離れている。
住民は現在も就業中である生産年齢人口が多く、通勤や通学で駅を利用する人も多い。高津区全体の自家用車の分担率は13%にとどまっており、公共施設や病院に通うには、路線バスだけではアクセスしづらい地域でもある。
その上で、近年では路線バスの便数やタクシーの台数が減少しているのだから、住民は日常生活で移動に対して困る場面が増えているに違いない。
橘公園の前を通る川崎の路線バス(写真:筆者撮影)
ところが、地域住民の多くは、そうした町の変化をあまり認識していないようだ。
武蔵小杉駅の1日当たりの乗車人数は約1万3000人におよび、主要道路を多くのクルマが行き交う様子を日常的に見ていると「周辺の交通環境が変化していることを、多くの住民は認識しづらい」と、川崎市まちづくり局交通政策室の関係者は指摘する。
川崎市民だけではなく、多くの市町村で、「交通の課題」というと、人口の少ない山間部に注目する場合が多いだろう。
しかし、実は川崎市高津区のように人口が多い地域でも、路線バスの減便による地域社会への影響が大きいのだ。こうした地域の変化について、地域住民は俯瞰する機会がない。
川崎市では、住民が無自覚であるからこそ、行政が先手を打って交通施策を進める必要があると考えている。