絵に描いた餅に終わらせないためには

 近年、一部法改正などによって話題となった、自家用車をタクシーのようにして使うライドシェアなど、自宅や事業所と目的地を乗り換えなしで直接結ぶ移動に比べて、モビリティハブでは乗り換えが生じる。

 乗り換えの手間に加えて、例えばモビリティハブで借りたシェアサイクルで自宅に戻るなど、ワンウェイで借りた場所に自転車を戻さない場合は、事業者がシェアサイクルを回収するコストがかかるなど、課題は多い。

 実際、モビリティハブを地域の賑わいや情報発信の場として活用するとの提案は全国各地であるものの、絵に描いた餅で終わるケースが少なくない。

 定期的なイベント開催や趣向を凝らした地域の集まりなども、持続して運用するには、地域の人々の深い理解と行動力が必要になる。これらが、現実ではとても難しいのである。

「モビステ川崎・橘公園」では、こうした全国各地での課題解決の糸口になるような、実績を大いに期待したいところだ。

モビリティハブの横展開

 そこで強い味方となるのが、アットヨコハマだ。2019年の創業以来、横浜都心臨海部での観光の回遊性を高める様々な取り組みをしてきた。

 代表的な事例は、「グリーン・マルチモビリティハブステーション・みなとみらい」(2024年12月21日〜2025年3月23日)だろう。移動データの解析に加えて、アンケート分析を横浜市立大学と共同研究するなどして、モビリティハブの役割を定量化した実績がある。

横浜市内で実施された「グリーン・マルチモビリティハブステーション・みなとみらい」(写真:筆者撮影)

 そこでアットヨコハマが学んだことは、横浜市のような観光地でのオーバーツーリズム対策や、川崎市でのバス減便に伴う地域交通の改善など、モビリティハブの横展開が必要だということだ。

 その上で、事業性(採算性)を考慮すると、無人でも効果を発揮するモビリティハブ機能が必須だとの見解を示している。

 モビリティハブの原型はいかなるものが最適なのか。それを、どのようにアレンジすれば、持続可能な運営として地域にとって最適な形に仕上げることができるのか。

「モビステ川崎・橘公園」でのトライ・アンド・エラーに今後も注目していきたい。