「身分保持」議論の盲点──本人の希望をどう担保するか

 結婚が難題化する第二の理由は、制度の見直しがなお流動的である点だ。

 現行制度では、女性皇族は結婚により皇籍を離脱する。皇族数確保策を巡っては、政府有識者会議が2021年報告書で、「女性皇族が結婚後も皇族の身分を保持する案」と、「旧宮家の男系男子を養子に迎える案」などを提示し、国会で議論を進める土台となったが、今現在、目に見える形で具体的に進展しているとは言い難い状況だ。

 2025年に入ってからも、与野党協議が再開され、論点を上記の案に絞って検討する方針が示された。

 制度が決まらないまま結婚が現実味を帯びれば、「皇籍離脱で公務が回らなくなるのでは」という不安と、「だからこそ制度を急げ」という政治圧力が同時に高まる。結婚そのものが、本人の選択を越えて“制度論争の引き金”になりかねないのだ。

衆参両院が開いた皇族数確保に関する全体会議(2025年4月17日、写真:共同通信社)

 秋篠宮さまが会見で結婚について、「特にありません」と端的に答えられた言葉は、私的領域に踏み込み過ぎない姿勢であると同時に、制度未決着の下で軽々に語れない現実の反映とも読める。

 また女性皇族が結婚後も皇族の身分を保持する案は、「公務の担い手確保」という実務に焦点を当てるだけで女性皇族個人の意思をまるで尊重していないともとれる。配偶者や夫婦間に生まれた子供の扱いや、財政や身分の規律など派生論点も少なくない。

 議論が長期化するほど、当事者にとっては「将来像が定まらない」状態が続き、人生設計はどうしても慎重にならざるを得ず、佳子さまだけでなく独身の女性皇族の方々にとって、悩ましい問題となっているのではないだろうか。