ホンダ「N-ONE e:」/軽BEVの敷居を低くする「WLTC295km」の航続距離

 軽自動車「N-ONE」をBEVに改設計したN-ONE e:。これまで軽乗用車のBEVといえば事実上、2022年デビューの日産「サクラ」/三菱自動車「eKクロスEV」しか選択肢がなかった。そのカテゴリーにおける3年ぶりのニューフェイスということでセレクトした。

ホンダ「N-ONE e:」

 ホンダは2020年に小型BEV「Honda e」をリリースしたものの、性能不足と高価格が災いして日本、欧州の両市場で極度の販売不振に陥り、存在感を示すことができずじまいという失態を演じた。

 N-ONE e:は仕切り直しでホンダの電動化技術を世間にアピールする重要なタスクを担っている。そのためにホンダが取った道は十分な航続性能とポップさを前面に押し出すというもの。

 原型のエンジン版N-ONEはしゃれた内装を持ち味の一つとしていたが、N-ONE e:は一転、カジュアルな意匠に全面変更。現時点で最大の競合相手であるサクラが普通車の「アリア」に見劣りしない内装の質感の高さを看板としているのとは対照的である。

 航続力はWLTCモード(車の燃費や排出ガス量を測定するための国際的な試験方法)走行時で295kmと、サクラに対して100kmあまりのアドバンテージ。バッテリーをサクラの1.5倍積んでいるので、その点は優位だ。

 実際の航続距離も温暖期であれば200kmプラスアルファが期待される。BEVは航続150kmと200km、200kmと300kmでは用途の多様性がまるで違ってくる。ドライブ1回あたりの距離が長い地方部のユーザーにとって軽BEVの敷居を低くする効果は確実にある。

 現時点ではエンジン版と比べると価格が高い、高効率な空調システムを搭載しておらず、低温時は航続距離が大幅に短くなることが予想されるなどのネガティブ要素も抱えているが、それらをモデルライフ途中で改良し、性能・機能の向上を継続的に図れば、ミニマムな電動トランスポーターとして息長く存在感を発揮できるかもしれない。