9月に発売されるホンダ「N-ONE e:」のフロントビュー
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井元 康一郎:自動車ジャーナリスト)

軽商用車「N-VAN e:」と共通する電気駆動システム

 これまで日産三菱連合が「サクラ」/「eKクロスEV」で独占してきた軽乗用車BEV(バッテリー式電気自動車)にまもなく強力な競合モデルが登場する。ホンダが7月28日に先行公開した「N-ONE e:」がそれだ。8月1日に予約を開始、9月に発売されるという。

 ホンダの三部敏宏社長は2021年に就任後、クルマのEV化を強力に推進してきたが、リテール向けBEV第1号の「Honda e」が空振りに終わり、BEV大国となっている中国でも新商品がことごとく不発に終わるなど、今のところ成果はほぼゼロだ。

 BEVの需要の伸び自体が鈍化しているという事情はあるが、ホンダの抱える問題は市場動向の影響ではなく競合に負け続けていることにある。軽自動車のN-ONE e:は日本市場専用とみられるが、ホンダにとってはこれまでの悪い流れを何とか変えるための重要なモデルである。果たしてN-ONE e:はその大役を果たすことができるのだろうか。

 N-ONE e:の価格や主要諸元は8月23日時点では未発表だが、電気駆動システム自体は2024年秋に発売された軽商用車「N-VAN e:」と共通。すでに予約受け付けが開始されていることから、価格やグレード構成もおおむね判明している。

ホンダ「N-VAN e:」(写真:日刊工業新聞/共同通信イメージズ)

 クルマ自体、完全な新規開発ではなく内燃機関搭載の軽モデル「N-ONE」を改修する形で作られているので、パフォーマンスやテイストもおおよその想像はつく。

 筆者は現行の第2世代N-ONEのCVT車を4000km、MT車を3700kmロードテストしたことがあり、さらにN-VAN e:の航続力、充電受け入れ性の検証も行っている。これらの経験からN-ONE e:がどの程度の商品力を発揮できるか考察してみたい。