見えない課題が離職を連鎖させる悪循環

 1つは不満が表に出てこないこと。すると、社内の課題発見が遅れて退職につながりやすくなり、さらに課題が放置されれば退職者が連続するリスクを抱えることになります。

 次に、社内の雰囲気が悪化すること。会社の不満が聞こえてこない状態を順調な証拠と受けとってしまうのは危険です。表向きは口に出さないものの本音では不満を抱えている社員の振る舞いは、マイナスの波長となって周囲に伝播します。職場の雰囲気が悪化して生産性が下がったり、それが原因で社員が辞めてしまったりすることも起こりえます。

 最後3つ目は、採用に悪影響が生じること。1人当たりの求人数を示す有効求人倍率は10年以上も1倍を超え続け、慢性的な採用難の状況にあります。「社員が辞めても、代わりはいくらでも採用できる」などという考え方が通用する時代ではありません。

 さらには、誰もがSNSで発信したり口コミサイトに書き込んだりできて、社内の悪い噂が世の中に広がりやすくなっています。退職者が抜けた穴を埋めようと採用したくても、意思疎通もままならない会社だと知れ渡れば働き手からは選ばれにくいでしょう。

 社員の退職を会社の課題に気づかせてくれる機会と受けとれば職場改善に生かすことができますが、多くの会社は退職を裏切り行為と見なしがちです。しかし、退職を裏切りと見なすのは少なくとも2つの点で認識がズレています。