上司と部下の1on1に潜む“通じていない”問題

 問題社員などの例外を除き、基本的に会社は社員に退職してほしくないものです。社員が辞めることは、戦力が削がれることを意味します。また、採用はもちろん、育成にも多くの時間と労力とコストがかかっていますし、そもそも仲間が去るのは寂しいことです。

 もし退職希望があったとしても、話し合えば誤解を解消できたり、働き方を変えたりと何らかの解決策が図れるかもしれません。そんなコミュニケーション機会を持つことすらできず、退職代行を使って一方的に退職宣告されるということは、少なくとも社員側では話し合う余地がないと結論を出していることになります。

 退職代行を必要としているのが社員側であるのに対して、退職引き止めサービスを必要としているのは会社側です。ただ、社員が退職する原因が分かっている会社であれば課題はその具体的な対応策の方に移るので、基本的には必要のないサービスになります。

 会社が退職引き止めサービスを利用するということは、社員がいまどんなことに悩んでいるのか、不満は何かといった情報を把握できていないということです。やはりそこには、会社と社員の意思疎通に破綻が生じている疑いがあります。

 社員とは上司との1on1面談などを通じてこまめに意思疎通を図っているつもりでも、社員が本音を伝えられているとは限りません。場を設けても雑談するだけで終わってしまうとか、上司が一方的に説教めいた話をして満足しているケースもあります。

 会社がそれを良好な意思疎通だと勘違いしているとしたら、本音を吐きだせない社員側の気持ちはどんどん離れていくことになります。

 社員との意思疎通が破綻してしまうと、会社にとって決定的にマイナスです。大きく3つの問題が生じます。