米カリフォルニア州の高校で授業でも使われているグーグルのGemini(1月22日撮影、写真:AP/アフロ)
1月中旬、テクノロジー業界を揺るがす巨大な「同盟」が産声を上げた。米アップルと米グーグルが、生成AI分野で複数年にわたる戦略的提携を発表してから約3週間。
次世代の「Apple Foundation Models(アップル基盤モデル)」の土台としてグーグルのAI「Gemini(ジェミニ)」を採用するという決断は、かつての宿敵同士による「呉越同舟」を超え、AI市場の勝負のあり方が「知能の高さ」から「実装のコストと安定性」へと完全移行したことを示唆している。
「最強の脳」を外部に求めたAppleの現実
今後の数年にわたる提携により、年内に予定されている音声アシスタント「Siri(シリ)」の刷新を含む「Apple Intelligence(アップルインテリジェンス)」の基盤は、グーグルの技術と統合される。
アップルはこれまで自前主義にこだわりを見せてきたが、昨年来のSiri開発の遅延や、自社開発モデルの性能への冷ややかな評価が、今回の現実的な選択を後押しした格好だ。
アップルは今回の合意にあたり、「グーグルの技術が最も能力の高い土台を提供する」と異例の評価を下した。
これは、昨年11月に投入され、多くの指標で「Chat(チャット)GPT」を凌駕した最新モデル「Gemini 3」の実績を認めたものといえる。
背景にある「Nano Banana」とインフラの勝利
グーグルがこの提携を勝ち取った背景には、2025年後半からの劇的な巻き返しがある。
同年夏の画像生成ツール「Nano Banana(ナノ・バナナ)」の成功を機に、若年層の支持とAIモデルとしての信頼を急回復させた。
さらに決定打となったのは、グーグルが10年以上かけて垂直統合を進めてきたインフラ能力だ。
自社開発のAI半導体「TPU」の最新版「Ironwood(アイアンウッド)」による低コストな運用体制は、巨額の設備投資に苦しむ競合他社に対し、圧倒的な優位性を築いた。
アップルが年間約10億ドル(約1600億円)とも推計される契約料を投じてまでグーグルを選んだ理由は、この「安定したインフラ」という実利にある。