アップルの経営陣刷新と「製品主導」への回帰

 アップル側にも変化の兆しがある。

 同社は昨年末、AI開発を主導してきたジョン・ジャナンドレア氏の退任と、グーグル出身でGemini開発の経歴を持つアマル・スブラマニア氏の起用という大胆な人事を断行した。

 この刷新は、ティム・クックCEO(最高経営責任者)の下で重視されてきた「オペレーションの効率」から、再び「製品・イノベーション主導」へと舵を切る意志の表れとみる向きが多い。

 次期CEO候補としては、ハードウエアエンジニアリング部門トップのジョン・ターナス氏の名が浮上している。このことも、AIを搭載した「究極の製品体験」へリソースを再集中させる同社の姿勢を裏付けている。

オープンAIの「コード・レッド」と市場の再編

 この提携により、米オープンAIの立場は微妙なものとなった。

 2024年末にChatGPTがSiriに統合された際、主役の座を射止めるかに見えた同社だが、今回の提携により「デフォルトの知能レイヤー」の座をグーグルに奪われる形となった。

 オープンAIのサム・アルトマンCEOが昨年末に社内で発令したとされる「コード・レッド(緊急事態)」は、まさにこの事態を予見したものだったといえる。

 アップルのエコシステム内においては、一般的なAI体験はGeminiが担い、ChatGPTはより複雑でオプトイン(選択制)の高度なクエリーを処理するという「住み分け」が進む見通しだ。