
「心理的安全性の醸成」や「数値化・言語化」「効率化」など、問題解決に役立つマネジメント術を実践しているにもかかわらずうまくいかない。それどころか逆効果になってしまう。そんな悩みを抱えるマネージャーがいないだろうか。本連載では、数々の経営支援や事業投資を行うIGPIグループの共同経営者が書いた『失敗事例から学ぶ! マネージャーの思考術』(坂田幸樹著/翔泳社)から内容の一部を抜粋・再編集。失敗事例を交えながらマネジメントに必要な考え方を学ぶ。
今回のテーマは「数値化・言語化」。日報にLINEを導入するなど、Z世代の部下とのコミュニケーションに手応えを感じていたマネージャーが、顧客とのトラブルのサインに気付かなかった理由とは?
事例:日報を読んでも、現場の問題に気づけなかった

■ LINEでのカジュアルな日報
B社は30年の歴史を持つ業界でも大手の人材紹介会社です。ここ数年B社の中で問題になっているのは、体育会系のB社の社風についていけないZ世代の離職率が高いことです。マネージャー間では以下のような会話が日常的になされています。
「Z世代に仕事のミスを指摘したら、翌日から会社にこなくなった。3日後に退職代行会社から退職すると連絡があった」
「Z世代は何でもオンラインで済ませようとする。私が新人だったときには毎日10件はお客さんとの対面アポを入れていた」
B社の新人マネージャーのMはこのような会社の状況を踏まえて、LINEを使った日報に切り替えることにしました。Mの思いとしては、堅苦しいレポート形式よりもカジュアルなLINEのほうが、Z世代中心のメンバーとわかり合えると考えたようです。
LINEによる日報の導入は順調に進み、メンバーは絵文字も使ってMに日報を送っていました。日報には仕事で感じたこと以外にも私生活での出来事なども含まれていて、Z世代とわかり合えたことにMは満足していました。
■ ある日噴出した現場のトラブル
そんなある日、Mは顧客企業から突然の電話を受けました。
「3週間前にお願いした急ぎの案件に関して、何も連絡がなくて困っています。担当者に電話しても連絡が取れないので何とかしてもらえませんか?」