
「心理的安全性の醸成」や「数値化・言語化」「効率化」など、問題解決に役立つマネジメント術を実践しているにもかかわらずうまくいかない。それどころか逆効果になってしまう。そんな悩みを抱えるマネージャーがいないだろうか。本連載では、数々の経営支援や事業投資を行うIGPIグループの共同経営者が書いた『失敗事例から学ぶ! マネージャーの思考術』(坂田幸樹著/翔泳社)から内容の一部を抜粋・再編集。失敗事例を交えながらマネジメントに必要な考え方を学ぶ。
今回のテーマは「心理的安全性」。マネージャーが相談しやすい雰囲気をつくったのに、次々に若手が離職してしまったある理由とは?
事例:相談しやすい雰囲気をつくったが、離職率が上昇した

■ メンバーの相談を受けるための1on1ミーティングの設定
T事務所は100名以上の税理士を要する歴史ある税理士法人です。T事務所では大手企業の案件をチームで受注する体制を採用しています。近年、海外から受注する案件が増えてきたことやDXへの対応の必要性などに伴い、メンバー各々がより多角的なスキルを身につける必要が出てきました。
T事務所の人事部門のマネージャーであるGは、若手メンバーの自律的な成長のためにメンター制度を導入しました。この制度では、経験あるメンバーが各若手にメンターとして割り当てられ、定期的な1on1ミーティングを行うことになりました。
1on1ミーティングは社外のカフェなどで実施することが推奨され、自律的な成長を目指しているためメンターは若手の話をさえぎったり否定したりせず、しっかりと耳を傾けるように指導されました。
定期的に開催される1on1ミーティングでは、若手メンバーは現場での不満や悩みなどを語り、メンターもそれを傾聴することに徹したため、社内全体に若手が意見を言いやすい雰囲気が醸成されました。若手メンバーからの評判も良く、Gはメンター制度を導入したことに満足していました。