「アルファード」の豪華路線決め打ちで日産を圧倒したトヨタ

 第2世代のエルグランドは、車体形式をフレームから乗用車的なモノコックに変更しつつ、駆動方式はRWD(後輪駆動)。後サスペンションは走行性能や乗り心地の向上に寄与するマルチリンク、エンジンはハイパワーな3.5リットルV6と、大型高級セダンをそのままミニバンにしたようなモデルに仕立てられた。

 それに対してトヨタはグランビアに代えて第1世代の「アルファード」をリリース。前輪駆動の大衆モデルと共通のプラットフォームを用い、エンジンは3リットルV6に加え、低コストな2.5リットル直4も用意。そのうえで得意とする豪華な室内装飾を与え、エルグランドに挑んだ。

 両車とも2002年5月発売だったことから注目された対決の結果は、アルファードの大勝利だった。

 当時のアルファード開発責任者は「日産さんが狙ってくるであろうモダンリビング路線(過度に飾らず、それでいて安らげることを狙いとした室内設計)とウチの豪華路線、どっちが受け入れられるかは出してみるまで分からなかった」と、悩みながらのクルマ作りだったと振り返った。

 差は年を追うごとに広がる一方だった。日産は2010年に第3世代エルグランドを背を低め、走行性能を高めるという形で出したが、大型ミニバンに派手さ、豪華さを求めるユーザーからはほとんど顧みられなかった。豪華路線に決め打ちしたトヨタが2015年に第3世代アルファードを出すと、もはや形勢は決定的となった。

トヨタ「アルファード」(写真:日刊工業新聞/共同通信イメージズ)

 そのトヨタとて、最初から豪華路線に確信を持っていたわけではない。これまで作ったことがないというくらいの満艦飾ぶりの第3世代の発表会では開発者、間接部門の社員とも不安げな表情を見せ、「これ、どうですかね。売れると思いますか?」と記者に問いかけたりしていた。

 やりすぎではないかという不安を乗り越えて弾けたクルマ作りを成し遂げ、それがユーザーの喝采を浴びるというサイクルを繰り返したことが、今日のアルファードやその上の「レクサスLM」の“我が世の春”を生んだと言える。

レクサスの最高級ミニバン「LM」(写真:共同通信社)

 次期エルグランドはそんなトヨタ一強と化した市場に再チャレンジするモデルとなるわけだが、第3世代がデビューした2010年から第4世代が発売される2026年夏までの16年間が事実上ブランクとなった影響は大きい。

 果たして斬り込みを成功させることはできるのだろうか。